筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
読者さんへの前おきメッセージ
認知症利用者さんとの日々のケアの中で、特に入浴、排泄、食事の介助時には、ご本人の行動や反応に悩むことが多々あります。
なぜそのような反応を示すのか、その背景や理由を多方面から考えることが大切です。
この記事では事例を使って、多方面の視点から対応策を検討する方法をお伝えいます。
この記事を読む価値
- 研修資料としても役立てられます。
- 拒否のある認知症利用者への接し方がわかります。
- 事例から考えるため、理解しやすい内容です。
早速、見ていきましょう。
多方面から理由を考える
認知症の利用者さんは、時々、「食事を拒否する」「入浴を嫌がる」など職員がしてほしいことを拒む場面があります。
そのような時は無理強いするのではなく、その原因を、身体状況、心理状況、生活環境など、多方面から考察する必要があります。
以下の具体例を参考にして、どのように考えていくのか、ご一緒にみていきましょう。
事例1:入浴時に脱衣場への誘導を拒否される
Aさん(男性、80代、要介護3、アルツハイマー型認知症)は、見当識が低下していて、特に場所の認識が難しい方です。
トイレや入浴時にはスタッフの誘導が欠かせません。
歩行状態は自立しています。
また、白内障の影響で視力低下もすすんでいます。
入浴時になると脱衣場へ誘導しようとするたびに強く拒否され、うまく誘導できないことが続いています。
Aさんは長年酪農業に従事し、日課として毎日仕事を終えた午後4時ごろに入浴していました。
この習慣は長い間続けてきたもので、施設での生活においても、身体的なタイミングと結びついていると考えられます。
現在、施設では入浴時間が午前中に設定されていますが、Aさんはこの時間になると特に不安が強まり、入浴を嫌がる傾向があります。
トイレ誘導時には、オレンジ色のカーテンを目印にしているためスムーズに案内できていますが、脱衣場にはそういった明確な目印がなく、移動に抵抗感を示すことが多いようです。
視覚的な目印の導入:
脱衣場への誘導がうまくいかない原因として、白内障による見えにくさから場所の不安がある可能性が考えられる。
そこで、脱衣場の入り口にAさんが認識しやすい暖色系ののれんを設置し、声かけの際に「ピンク色ののれんのある場所に行きましょう」と案内してみる。
生活歴に基づいた入浴時間の調整:
Aさんが過去に習慣づけていた午後4時ごろの入浴という生活リズムを尊重し、午後の時間帯に声をかけて誘導するように変更してみる。
個別的な趣味に合わせた対応:
Aさんが酪農に関わっていたことを尊重し、のれんに牛のイラストを描き、親しみを感じてもらう工夫も加えてみる。
Aさんにこれを見てもらいながら「面白いね」と談笑しながらの誘導を試みてみる。
このように、背景や生活歴に基づいて視覚的な工夫を取り入れ、声かけや環境の調整を行うことで、Aさんの不安を和らげることができる可能性があります。
事例2:服の毛玉が気になり、脱衣がスムーズに進まない
Bさん(女性、70代、要介護2、老年期認知症)は、身の回りを整え、服装に気を配る習慣がある方です。
デイサービスで入浴時に衣服を脱ぐ際、目に見えないような小さなホコリや毛玉が極端に気になり、その都度気を取られるため、なかなか脱衣がスムーズに進みません。
眼科や認知症専門医に診察を受けましたが、視覚異常や幻視は認められませんでした。
Bさんは社交的で、地域の婦人会などにも参加し、人前での身だしなみや清潔感に対して非常に意識が高い方です。
特に衣服がしわになったり、乱れたりすることに抵抗を感じ、デイサービスでも服のたたみ方や保管にまで細やかな配慮が求められます。
Bさんが施設に到着した際、衣服のしわやたたみ方が気になるため、職員が「しわが寄らないようにハンガーにかけておきますね」と声をかけないと、上着を脱いでくれないこともあります。
また、脱いだ服は丁寧にたたむ必要があり、たたむ途中で目に見えないホコリが気になり始めると再度服を触り始めてしまいます。
視覚的に確認できる道具を提供:
Bさんがホコリや毛玉を気にする際に、職員が粘着ローラーを用意し、Bさん自身で「ホコリが取れている」と実感できるようにしてみる。
Bさんに納得していただいて、スムーズに衣服を脱げるよう促してみる。
たたむ動作のサポートと丁寧な確認:
脱衣後、Bさんの衣服は職員が丁寧にたたみ、棚の上に整えて保管し「こちらでお預かりしておきますね」とお伝えすることで、Bさんが脱衣した後も服が気にならなくなる可能性がある。
Bさんの「きれい」へのこだわりを尊重:
Bさんにとっての「きれいさ」や「整った状態」には非常に高い基準がある為、この価値観を尊重し、細かい気遣いを見せることで、Bさんも安心して入浴の時間を過ごせるようになる。
このように、Bさんの価値観に合わせて対応することで、Bさんが抱える不安やこだわりを解消できるよう試みてみます。
事例3:突然の入浴拒否、理由が分からないCさんの場合
Cさん(女性、70代、要介護4、アルツハイマー型認知症)は、過去には入浴に応じていたものの、ある日突然入浴を拒否するようになりました。
それまで「着替えましょう」という言葉でスムーズに誘導できていたのが、今では「私のことをバカにしている」という言葉が頻繁に聞かれるようになり、拒否が続いています。
Cさんは長年、兼業農家として働き、さらに40歳までの間に家庭でも中心的な役割を担っていました。
地域で信頼を集めるしっかりとした性格で、決して他人に頼ることなく自立して生活をしてきました。
そのため「誰かに介助される」こと自体に抵抗感があり、自分の意志やプライドを尊重されていないと感じると、特に拒否感が強くなる傾向があります。
施設ではCさんに対して「入浴の時間ですので、準備しましょう」と声をかけるものの、「私には自分でできる」「何度も同じことを言わないでほしい」という反発的な反応が見られ、職員がうまく対応できないことが増えてきました。
「自分でできる」という感覚を尊重:
Cさんは自立心が強いため、「お手伝いします」や「入浴の時間です」といった一方的な誘導が反発を招く。
そこで、職員が「Cさん、今日は体調はいかがですか?」と一度本人に聞く形で声をかけ、Cさんが「自分の意思で」入浴を選べるようにサポートしてみる。
身だしなみへの配慮と尊重:
Cさんは他人から見られることにも敏感なため、入浴後に少しおしゃれなタオルやガウンを用意しみる。
「見られても大丈夫」と感じられるよう工夫してみる。
過去の役割と価値観を反映したアプローチ:
Cさんが長年家庭と農業の両立をしてきた経験を尊重し、「入浴後に今日の一日の予定を相談させてくださいね」とお願いすることで、Cさん自身に役割を感じていただく。
まとめ
いかがだったでしょうか。
利用者さんの行動には、その人のこれまでの経験や、感覚、心理面など、いろんな背景が関係しています。
もし拒否があった場合、そういった行動の理由をしっかり理解して、いろんな角度からアプローチすることで、安心して過ごせる環境を作るのが大切です。
それぞれの利用者さんの個性や価値観に合わせたサポートをすることで、介護の質をもっと良くして、利用者さんの尊厳を守りながら、適切なお手伝いができるようになります。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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