筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
読者さんへの前おきメッセージ
デイサービスの入浴介助は、決まった時間に予定している利用者さんを全員入れなければいけない「時間との戦い」になっています。
そういった中でも、利用者さんの安全にも気を遣い、また気持ちよく入浴してもらう必要があります。
全てを順序よく実施していくためには、入浴前の準備は非常に大切です。
今回は入浴前の準備について見ていきます。
この記事を読む価値
- 入浴前の準備について、全て知ることができます。
- デイサービスの入浴介助研修にすることのできる資料です。
- ワークを入れると30分程度の内容です。
早速みていきましょう。
入浴前の準備
入浴前の準備は5に分けて考えます。
- 水分補給
- バイタルサイン、体調
- トイレの確認
- 脱衣室、浴室等の環境設定
- 衣類や入浴用具の準備
それぞれ、具体的に解説していきます。
① 水分補給
入浴中は汗をかき、水分を失いやすくなり、脱水のリスクがあります。
また、入浴による体温上昇は血管を広げ、血圧を下げる効果がありますが、十分な水分がないと血流が悪くなり、めまいや立ちくらみを引き起こすことがあります。
入浴の15分~30分ほど前に、コップ一杯の水分摂取を促しましょう。
② バイタルサイン、体調
入浴前に利用者さんの体調とバイタルサインは確認しておきましょう。
バイタルサインは血圧・脈拍・体温・呼吸数となりますが、特に血圧には注意が必要です。
血圧は、前期高齢者(65歳~74歳)と後期高齢者(75歳~89歳)で分類して考えます。
前期高齢者の血圧正常値は、一般の成人男性と同じ140/90未満、また後期高齢者の正常値150/90未満で、この数値を超えると高血圧を疑います。
ちなみに75歳以上の80%が高血圧と言われています。
そして低血圧は一般的に、最高血圧(収縮期血圧)が100mmHg以下、最低血圧が60mmHg以下であることを目安としている病院が多いです。
いずれにせよ、利用者さん各々によって血圧の状態は違うので「普段とどれだけ差異があるか、血圧以外に他の症状はないのか」等を考慮し、入浴の可否を決めます。
判断に迷うときは看護師等の医療職に相談するようにしましょう。
また、本人が不調を訴えるようであれば、無理に入浴を行わずシャワー浴だけにとどめたり、清拭に変えたりなど、別の方法を検討するようにします。
③ トイレの確認
高齢者は動作がゆっくりです。
もちろんトイレ動作も時間がかかります。
職員が利用者さんを入浴へお誘いしてから「じゃあトイレを済ませておこう」とするとかなり時間がかかり、職員は焦ってしまいます。
入浴へお誘いする20~30分前には「もうすうお風呂へお誘いいたしますが、お手洗いは大丈夫ですか」とお声かけをしておきましょう。
また、その時は尿意がなくても、着脱を済ませてからトイレに行きたくなる利用者さんもおられます。
他の職員と情報共有し、その利用者さんの特徴なども事前に確認しておくと良いかもしれません。
④ 脱衣室、浴室などの環境整備
脱衣室・浴室の温度はおおむね24~25度が適当とされてます。
特に冬場の浴室は寒く感じることもあります。
ヒートショック※のリスクなども考慮し、あらかじめ浴室の壁にシャワーをかけて蒸気で温めておきましよう。
もちろん浴室の窓が閉まっているかも確認します。
また次のような項目も準備しておきます。
- 浴槽のお湯の温度は38~40度程度に設定しておく
- 滑り止めマットをしっかりと固定しておく
- ボディーソープやシャンプーの補充をしておく
- 掃除道具は利用者さんに見えないところへ保管しておく
- 交換用のバスマットを複数用意している
準備することは多いですが、利用者さんに安全・安楽に入浴していただくため、事前に環境整備はしっかり行いましょう。
滑り止めマットなど、入浴中に使う福祉用具について詳しく知りたい方は、コチラのブログをご覧ください。
⑤ 衣類や入浴用具の準備
入浴後に着る衣類、オムツ(リハビリパンツ・パット)、フェイスタオル、バスタオルなどを事前に準備しておきます。
利用者さんが浴槽に入っているときに衣類等の準備をしようとする人もいますが、入浴中に目を離すことは危険です。
複数人が使用するデイサービスでは、必ずタオルや下着の紛失が生じます。
タオルや下着の紛失対策として、利用者さんやご家族に「名前の記載」を依頼しておくと良いかもしれません。
着替え
着替えは座って行っていただくため、適切な距離に椅子を設定しておきましょう。
ズボンの着脱の際に立つ方も多いです。
その際、ふらつきや転倒を防げるように、手すり等で身体を安定させる配置が必要です。
また、基本的に脱衣の際には、健側から患側の順番で行います。
時計やメガネ、補聴器、アクセサリーなどを外してもらう際は、決まった置き場所があると紛失のリスクが減ります。
事業所内で統一しておきましょう。
浴室への移動
浴室では利用者さんは裸であり、はだしで移動します。
よって、いつもよりバランスを崩しやすく、ちょっとした打撲で皮下出血や擦過傷などをおこします。
移動中は絶対に目を離さないことが大切です。
また、脱衣室の床に利用者さんがつまずきそうなものを置かないようにしましょう。
清掃用具やシャンプー、足拭きマットのめくれなどは転倒の危険があります。
注意して確認するようにしましょう。
浴室へ入った際も、床がぬめっていないか、泡が残っていないか等の注意も必要です。
ワーク
次のテーマでワークをします、
まずは個人ワークでできるだけ多く書き出します。
そして5人程度のグループに分かれてシェアしましょう。
個人ワークは5分、グループワークは10分程度で実施しましょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は入浴前の準備について、いろいろ解説をしました。
しかし最も大切なのは、ケアする側の体調管理だと思います。
いくら適切に準備をしたとしても、ケアする側の体調が良くないと、入浴中は体力も注意力もいるため、十分なケアが行えません。
もし「明日は入浴介助がある」とわかっている場合は、早めの睡眠をし、飲酒を控え、十分休息をとった上で、取り組むようにしましょう。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この研修資料が、御社の運営にお役立ていただければ幸いです。
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