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「うつさない・広げない」感染症研修|訪問介護事業所用

とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。【介護施設の高齢者虐待防止に資する研修】をタイトルのような内容でお伝えします。

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

訪問介護現場では、職員複数利用さん日々訪問し、支援ってます。

その一方で、感染を「持ちない・持ちない」ため配慮常に求めます。

高齢持病ある多い在宅介護では、たった一つ油断関わることあります。

令和3年度介護報酬改定以降、感染対策制度明確義務れ、事業としてより実践取り組み求めています。

記事では、訪問介護現場役立つ感染対策基本と、すぐ実践できる予防策、そして実際事例から学ぶ教訓などを、わかりやすく整理しました。

利用さん安心守るため、そして職員自身守るために、ぜひ明日から実践立てください。

感染症の基本知識(インフルエンザ・新型コロナウイルス・ノロウイルス)

まず、今回取り上げる3つの感染症「インフルエンザ」「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」「ノロウイルス感染症」について、その特徴や感染経路、潜伏期間など基本知識を整理していきます。

インフルエンザ(季節性インフルエンザ)

病原体はインフルエンザウイルスで、潜伏期間は約1~4日(平均2日)です。

症状は高熱、咳、喉の痛み、筋肉痛など全身症状が特徴で、高齢者では発熱がはっきりしない場合もあります。

感染経路は主に飛沫感染と接触感染です。

感染者の咳やくしゃみの飛沫を吸い込むことによる飛沫感染、また飛沫が付着した環境表面に触れた手で口や鼻を触ることによる接触感染で広がります。

発症後5日間程度は他者へ感染させる可能性が高く、集団感染の原因にもなり得ます。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

病原体はSARS-CoV-2という新型コロナウイルスで、潜伏期間は1~14日(一般的に5日前後)とされています。

症状は発熱、咳、喉の痛み、強い倦怠感などで、重症化すると肺炎に至ります。

高齢者や基礎疾患のある方は重症化リスクが高い点に注意が必要です。

感染経路は主に飛沫感染と接触感染です。

感染者の飛沫(くしゃみ・咳・会話で飛ぶ粒子)を吸い込むことで感染し、また飛沫で汚染された手すりやドアノブ等に触れた手で口や鼻を触ることで感染します。

換気の悪い空間では微小な飛沫粒子(エアロゾル)による空気感染的な広がりも指摘されていますが、基本は飛沫・接触対策が重視されます。

発症2日前から感染性があり、発症後7~10日程度は他者に感染させる可能性があると報告されています。

ノロウイルス(感染性胃腸炎の代表的原因ウイルス)

ノロウイルスによる胃腸炎は冬季に多く発生し、潜伏期間はおおよそ24~48時間です。

突然の激しい吐き気・嘔吐、下痢、腹痛が主な症状で、発熱は軽度にとどまることが多いです。

通常1~2日間症状が続いた後に回復し後遺症は残りません。

しかし高齢者の場合、嘔吐・下痢による脱水や誤嚥性肺炎に注意が必要です。

感染経路はほとんどが経口感染(口からの侵入)で、多彩なパターンがあります。

例えば便や嘔吐物に大量に含まれたウイルスが手指を介して口に入る場合や、嘔吐物が乾燥して微粒子となり空気中に舞ったものを吸い込んで喉や鼻の粘膜から取り込まれる場合(飛沫感染的な経路)もあります。

ごく少量のウイルスで感染するため感染力が非常に強く、家庭内や施設内で人から人へ二次感染しやすいのが特徴です。

また罹患者の便中には、症状消失後1~2週間ウイルスが排出され続けることがあり、この間も注意が必要です。

以上のように、それぞれの感染症で感染経路や潜伏期間が異なります。

インフルエンザ・新型コロナは飛沫・接触に注意、ノロウイルスは経口感染対策が特に重要です。

訪問介護職員はこれらの特徴を踏まえて予防策を講じ、自分が媒介者とならないようにする意識が求められます。

訪問介護における感染拡大のリスクと背景

訪問介護の現場には、施設とはまた異なる感染拡大リスクや難しさがあります。

その背景を理解しておきましょう。

複数の利用者宅を移動する特性

訪問介護員(ホームヘルパー)は1日に複数の利用者さん宅を訪問します。

一人の職員が次々と家庭を訪れるため、職員自身がウイルスを運ぶ「媒介者」となるリスクが常にあります。

特にインフルエンザや新型コロナの流行時には、自分が気づかぬうちに保菌・感染し他の利用者さんに広げてしまう可能性がある点に注意が必要です。

在宅環境ゆえの制約

訪問先は利用者さんのご自宅である為、必ずしも十分な感染対策設備が整っているとは限りません。

例えば手洗い場や消毒設備が限られる、室内の換気が不十分な場合がある、共用する物品の消毒が行き届きにくい等の制約があります。

訪問介護員は限られた環境下でも工夫して衛生管理を行う必要があります。

利用者の高齢・基礎疾患

訪問介護のサービス利用者は高齢者や持病を持つ方が多く、感染症に対する抵抗力が低い傾向があります。

また認知症のある方だとマスク着用や手洗いへの協力が難しいケースもあります。

そのため、より一層こちら側で予防策を徹底し「うつさない・うつされない」よう配慮することが重要です。

職員不足・代替困難

介護職員が感染すると、その間は業務に従事できず他のスタッフでカバーせねばなりません。

特に訪問介護は代替要員の確保が難しいことが多く、一人でも離脱するとサービス提供に支障が出ます。

事業所内で感染が拡がり複数のヘルパーが離脱すれば、サービス継続が困難になるリスクがあります。

感染経路の見えにくさ

在宅ケアでは感染経路が多方面で、特定しづらいことがあります。

例えば「どこでウイルスをもらったか」がはっきりしないまま症状が出るケースも多いです。

利用者さん宅、ヘルパーの家庭、移動中の接触など様々な経路が考えられるため、常に包括的な感染対策が求められます。

こうした背景から、訪問介護では「持ち込まない・持ち出さない」予防意識が特に重要です。

訪問先を離れる際は必ず手指消毒し、ケア時に使用したエプロン等は着替えるなど、あらゆる場面で感染経路の遮断を意識することが求められます。

実際に起きた感染拡大事例とその教訓

ここでは、訪問介護の現場で実際に起こった感染症拡大事例を紹介し、そこから得られた教訓を確認します。

現実の事例から学ぶことで、自分たちの対策を見直すヒントにしましょう。

事例1:ホームヘルパーによるインフルエンザ集団感染

ある冬、訪問介護事業所のホームヘルパーがインフルエンザに感染していることに気づかず複数の利用者さん宅を回った結果、担当していた数名の利用者さんと職員に次々と感染が広がった事例があります。

インフルエンザは事業継続に大きな脅威となり、施設では新規受け入れ停止やデイサービス中止、訪問系サービスではスタッフ不足に陥る可能性があります。

この事例から、「体調不良時には無理に訪問しない」「発熱等の症状があればすぐ上司に報告し休む」という基本ルールの徹底が教訓となりました。

また、流行期には職員も予防接種を受けるなど事前予防に努める必要性も再認識されました。

事例2:訪問介護員が利用者さんから新型コロナウイルスに感染

新型コロナ流行下で、ある訪問介護員Sさんがサービス提供先の利用者さんからCOVID-19に感染し、残念ながら命を落とすに至ったケースがあります。

Sさんは当該利用者さん宅訪問時に利用者さんの発熱に気づき主治医に連絡、後日その利用者さんは陽性判明しました。

しかしSさん自身は訪問中にマスクを正しく着用しておらず、濃厚接触者として検査したところ陽性、その後病状が急変し亡くなりました。

この悲しい事例からの最大の教訓は、「基本的な個人防護策を油断せず守る」ことです。

特にマスクの常時正しい着用は命を守る行為であり、一瞬でも外した隙に感染するリスクがあると痛感させられました。

事業所ではこの教訓を受けて職員へのマスク着用指導を再徹底し、併せて職員のメンタルヘルスケアにも配慮しながら振り返りを行いました。

事例3:デイサービスでの疥癬(かいせん)感染を巡るクレーム

訪問介護ではありませんが、介護サービスにおける感染クレーム対応の教訓として参考になる事例です。

あるデイサービスで利用者さんのご家族が「デイサービスで疥癬に感染した」と苦情を申し立てたケースでは、職員が慌てて「うちでは他に感染者はいません」と即座に否定してしまったためご家族の不信感を高め、トラブルが深刻化しました。

後の調査で施設内に他の疥癬発症者がいないと判明し、ご家族には報告と感謝を伝えて解決しましたが、この事例の教訓は「感染クレームにはまず真摯に対応し、早急に調査・対策する姿勢を示す」ことです。

最初に謝罪と調査約束をしていれば、トラブルを防げた可能性が高いといえます。

また平時からご家族に対して感染症発生時の連絡協力をお願いし、感染防止策を共有しておくことの重要性も指摘されています。

「誰のせいで感染したか」より「これ以上感染させないこと」が大切であり、ご家族含め皆が同じ立場で協力する意識づくりが肝要です。

これらの事例から共通して学べるのは、「基本を怠らないこと」「初動対応が肝心であること」「関係者と情報共有し協力し合うこと」の重要性です。

自分の現場に置き換えて、同じ状況になったらどうするかを考えながら教訓を活かしていきましょう。

「うつさない・広げない」ための実践ポイント

続いて、明日から現場で実践できる具体的な感染予防・拡大防止のポイントを整理します。

訪問介護の場面ごとに、「うつさない・広げない」ために押さえておきたい行動を確認しましょう。

手洗い・手指消毒の徹底

手洗いは感染症対策の基本中の基本です。

訪問介護員は「1ケア1手洗い」を合言葉に、ケア前後や利用者さん宅の入退室時などあらゆるタイミングで確実に手指衛生を行いましょう。

手洗いにはアルコール手指消毒剤による方法と、石けんと流水による方法がありますが、目に見える汚れがある場合は石けんと流水で洗います。

特にノロウイルスなど経口感染症の予防には石けんによる手洗いが有効です。

手洗いの際は、指輪や腕時計を外し、指先・爪の間、指の間、手の甲や手首など洗い残しが多い部位もしっかり洗います。

実際に手洗い後に特殊なローション等でチェックすると、指先・親指周り・手の甲側に洗い残しが多い傾向が可視化されています(図:赤い部分が洗い残しが多い箇所)。

手の洗い残しが可視化された

こうしたポイントを意識し、最低15~30秒以上かけて指先から手首まで丁寧に洗いましょう。

アルコール消毒も汚れがない状態であれば有効ですが、指先や親指を忘れずにすり込むことが大切です。

訪問先でも車中でもすぐ手指衛生ができるよう、携帯用の消毒液を常備し、持ち歩くようにしてください。

マスク・手袋など個人防護具の正しい使い方

訪問介護員は日常的にマスクを正しく着用し、利用者さんと接する際は状況に応じて手袋やエプロン(ビニールエプロン)、場合によってはフェイスシールド・ゴーグルなども活用します。

ポイントは「着脱の手順」と「使い捨ての徹底」です。

ガウンの着脱方法

引用画像:長谷川綿行

マスクは鼻まで確実に覆い、隙間を作らないよう装着します。

顎マスクや鼻出しマスクでは意味がなく、着用中はマスク表面に触れないことも重要です。

手袋は清潔操作時や排泄介助、嘔吐物処理時に欠かせませんが、一人の利用者さんごとに使い捨て、使い回しは厳禁です。

手袋を外した後は必ず手指消毒を行います。

また、嘔吐物や血液など大量の体液を扱う際はディスポーザブルのエプロンやガウンを着用し、飛沫が飛ぶ恐れがある処置ではフェイスシールドやゴーグルで目や粘膜を保護します。

正しい着脱手順も訓練しておき、汚染した手袋やマスクに触れて自分の顔を触るといったミスがないようにしましょう。

個人防護具は感染を「もらわない・広げない」バリアです。

事例でも見たように、例えばマスクを一時的にも外すリスクが重大な結果を招きかねません。

現場では常に緊張感を持って適切に着用しましょう。

ケア前後・移動時の衛生管理

利用者さん宅間の移動時にも衛生管理の抜け目なく行う必要があります。

利用者さん宅に入る前にはまず手指消毒を行い、マスクやエプロンの着用状態を確認します。

退出時にも玄関先で手指消毒を行い、使い捨てエプロンや手袋は持ち帰らずその場で廃棄します。

移動中の車内でも油断禁物です。

車のハンドルやスマホ、荷物などにも自分の手を介して病原体が付着しうるため、訪問毎に手指消毒をすること、ハンドルや車内も定期的に消毒することが望まれます。

特に消毒用アルコールは車に置き忘れず携行し、すぐ使える状態にしておきましょう。

複数の利用者さんを訪問する日のスケジュール順にも配慮します。

例えば明らかに感染症が疑われる方とそうでない方の訪問が重なる場合、できれば後者→前者の順番に変更し、感染リスクの高い現場の後に他の利用者さん宅へ行かない工夫も有効です(サービス提供責任者等と調整してください)。

また、用具の衛生管理も大切です。

おむつ交換時は、使用済みおむつをすぐビニール袋に密封して周囲を汚染しない、入浴介助用具は利用者さん毎に消毒または専用化する、といった対策を講じましょう。

事業所に戻った後も、毎日のユニフォームの洗濯・交換や、バッグ・靴などの持ち物の消毒も習慣づけ、職場から家庭へウイルスを持ち帰らないことを徹底します。

感染が疑われる利用者への対応

サービス提供中に、利用者さんに発熱や嘔吐など感染症を疑わせる症状が見られた場合の対応は特に重要です。

まず慌てずに可能な限りの感染防止策をすぐ講じます。

具体的には、マスク・手袋・エプロン・フェイスシールド等フル装備に切り替え、利用者さんにもマスク着用を依頼できる場合はお願いし、部屋の換気を行います。

その上で速やかに主治医や上司へ報告・相談します。

必要なら訪問診療医や保健所の指示を仰ぎ、受診手配やPCR検査等の対応につなげます。

訪問介護員の判断で無理に対応せず、専門職や関係機関と連携することが肝心です。

また、訪問前から「もしかすると具合が悪いかも」という情報がある場合には、事前に状況を確認して訪問の必要性を検討することも求められます。

例えば利用者さんやご家族に毎朝検温をお願いし、訪問当日の朝に体温や症状を電話で確認する仕組みを作ります。

発熱等がある場合には、ご家族・ケアマネージャー・主治医に連絡し、その日の訪問を行うか延期するか慎重に判断します。

仮にサービスを中止しても生活に必要な支援が途切れないよう、他の手段(訪問看護の活用や家族支援)を調整します。

どうしても訪問が避けられない場合でも、重症化リスクの高い職員は担当させないなど配慮し、最小人数・最短時間でケアを提供します。

その際は前述の防護具フル装備・換気徹底で臨み、終了後は使用物品の廃棄と自分自身の消毒を念入りに行ってください。

家族や関係者との連携・説明のコツ

利用者本人だけでなくその家族や周囲の関係者との連携協力も重要です。

家庭というオープンな環境では、ご家族の理解と協力がなければ感染予防策は十分に機能しません。

以下、ご家族等と連携する上でのポイントと説明のコツをまとめます。

平時から情報共有し協力を依頼

利用者さんのご家族にも、平常時から感染症予防の重要性と具体的な協力事項を説明しておきましょう。

例えば「毎朝の体温測定と体調チェックへの協力」「手洗いやうがいの励行」「来客時のマスク着用」など、在宅でできる対策を分かりやすく伝えます。

特に感染症発生時の連絡ルールについては事前に取り決めて共有しておきます。

「もし〇〇の症状が出たらすぐ教えてください」「すぐ主治医に相談しましょう」といった形で、早期受診や早期連絡の重要性を周知してもらいます。

平時からご家族と一緒に感染防止に取り組む姿勢を築いておけば、万一発生時にもスムーズに協力を得られ、「なぜもっと早く対策しなかったのか」といったトラブルも防ぎやすくなります。

サービス利用に不安を抱える家族への説明

コロナ禍以降、「外から来るヘルパーさんを家に入れて大丈夫だろうか」と不安に思うご家族も少なくありません。

そうした不安に寄り添い、事業所で講じている感染対策を具体的に説明することが大切です。

「うちのヘルパーは全員ワクチン接種済みで、マスクは常に着用し、訪問毎に手指消毒と検温をしています」「少しでも症状があれば出勤させません」といった具体策を伝えると、ご家族も安心感を持ちやすくなります。

逆に漠然と「大丈夫です」だけでは不安は拭えません。

不安に感じたことは遠慮なく相談してもらい、質問には丁寧に答えるようにしましょう。

ご家族の不安の声から課題を見つけ、サービスの改善につなげる姿勢も信頼関係構築につながります。

感染発生時の家族対応

万一、利用者さんや職員に感染が判明した場合、まずはご家族へ迅速かつ正確に状況を報告します。

報告の際は事実関係を伝えるとともに、今後の対応策(例:「〇月〇日まで訪問を中止し経過観察します」「保健所と連携して消毒を行います」等)を説明し、ご家族の不安を軽減するよう努めます。

仮にご家族から「ヘルパーさんがうつしたのでは?」といった指摘やクレームがあっても、決して感情的に応酬せず、まずは謝意と対応方針を示すことが肝心です。

「ご心配をおかけして申し訳ありません。他の利用者様への広がりを防ぐためにもすぐ調査し、ご報告いたします」といった対応が望まれます。

そして判明した事実(例えば他の利用者さんに感染者がいなかった等)は速やかにご家族に報告し感謝を伝えます。

「早くお知らせいただいたおかげで助かりました」とご家族の協力に謝意を示すことで、対立ではなく協力関係を維持できます。

「お互い様」の精神を共通認識としてもつ

家庭での感染症は「誰が悪い」ではなく「お互い様」で協力して乗り越えるものという共通認識を持つことも大切です。

例えば幼稚園や学校でも、感染が出た際には責め合うのではなく全員で二次感染防止に努めます。

同様に介護現場でも、職員とご家族が対立するのではなく、同じ目標(感染拡大防止)の下に協力し合うことが理想です。

そのためにも、日頃から信頼関係を築き、「困ったときはお互い様ですので一緒に対策しましょう」というスタンスで接しておくことが大事です。

家族や関係者との連携においては、丁寧なコミュニケーションと情報共有、そして信頼関係の醸成が基本となります。

感染症への恐れや不安は誰しもありますので、相手の立場に立った説明と協力依頼を心がけましょう。

そうすることで「うつさない・広げない」環境づくりを皆で進めることができます。

感染症発生時の報告・連絡・相談体制

現場で感染症が発生した際には、迅速かつ適切な報告・連絡・相談(ホウレンソウ)体制が求められます。

訪問介護事業所における一般的な感染発生時の対応フローを押さえておきましょう。

職員から管理者への報告

利用者さんに発熱や嘔吐など感染症や食中毒が疑われる症状が出た場合、まず現場の訪問介護員は管理者(またはサービス提供責任者)に速やかに報告します。

同時に感染対策担当者がいれば共有します。

報告を受けた管理者は、他の利用者さんや職員への感染状況がないか把握します(※例えば他の利用者さんで似た症状が出ていないか、職員に体調不良者はいないか等を確認します)。

必要に応じて事業所内で緊急ミーティングを行い、初動対応を協議します。

関係機関への連絡・相談

次に、状況に応じて外部の関係先へ連絡します。

まず利用者さんの主治医に連絡し、受診の手配や指示を仰ぎます。

利用者さんが陽性確定した場合は、サービス担当責任者や管理者は当該利用者さんのご家族に状況を説明します。

また、その利用者さんを担当した他の職員がいればリストアップして、健康状態をチェックし、必要に応じて自宅待機などの措置を取ります。

同時に、居宅介護支援事業所のケアマネージャーにも報告し、必要なサービス調整を依頼します。

さらに、ケースによって管轄の保健所へも連絡します。

特に新型コロナやインフルエンザ等で通常より多くの感染者が発生している場合は、クラスターの可能性がありますので保健所に相談・報告し指示を仰ぐことが必要です。

保健所から疫学調査(いつ誰が発症し誰と接触したか等)の協力依頼があれば、サービス提供記録や勤務シフトなど必要情報を提供します。

なお行政への報告様式や基準は自治体により異なるため、事前に所在市町村のルールを確認しておきましょう(例:東京都練馬区ではコロナ陽性者が出た場合に所定の管理シート提出が求められる)。

消毒・清掃と拡大防止策の実施

報告連絡と並行して、現場の消毒や濃厚接触者への対応など拡大防止策を速やかに実施します。

具体的には、該当利用者さんの居室や共用部分の消毒・清拭を行い、必要に応じて事業所全体の消毒を実施します。

利用者さんが他のサービス(デイ等)を併用していればそちらにも情報提供し対応を依頼します。

また、濃厚接触が疑われる他の利用者さんについては、保健所と相談の上で訪問介護サービス提供を一時中止するか、継続する場合も訪問時に徹底した防護策(窓を開けて換気しながらケア等)を講じます。

職員については出勤停止や自宅待機の措置を取り、健康観察を行います。

経過報告と共有

状況が落ち着くまで、管理者は適宜その後の経過を事業所内外に報告・共有します。

例えば保健所や行政への報告事項(発生人数、症状、対応状況など)を整理し、求められれば文書で提出します(※近年は様式簡素化の傾向あり)。

事業所内ではカンファレンス等で事例を共有し、教訓を職員全員で振り返ります。

「どのように感染が広がったか」「対策に不備はなかったか」を検討し、マニュアルの改善や職員研修に活かします。

以上が一連の報告・連絡・相談の流れです。

平時よりこのフローを頭に入れておくことで、いざという時に落ち着いて対応できます。

また、事業所内には感染症発生時の責任者(感染対策担当者)を定めておき、役割分担を明確にしておくことも重要です。

誰が保健所と連絡調整するか、誰が家族対応するか等を決めておくと混乱を防げます。

最後に留意すべきは、法令上の報告義務です。

感染症法に基づく医師から保健所への届出とは別に、社会福祉施設等における感染症発生時は所轄行政への報告が求められる場合があります。

各自治体の通知(「○○県感染症発生時の報告要領」等)を確認し、該当する場合は迅速に届け出てください。

また、クラスター発生など重大な事案は厚生労働省や介護労働安定センター等が好事例・反省事例として情報収集することもあります。

隠さず正確に情報提供する姿勢が、業界全体の感染対策力向上にもつながります。

心のケアとストレス対策(感染不安・クレーム対応を含む)

感染症の流行期や発生時、介護職員は身体的な負担だけでなく精神的なストレスにも晒されます。

自分が感染する不安、利用者さんにうつしてしまう恐怖、周囲から責められるプレッシャ。

これらは介護現場で働く上で避けがたい心理的負担です。

ここでは、介護職員自身のメンタルヘルスケアとストレス対策について考えてみましょう。

「自分が媒介者になるかも」という不安

訪問介護員にとって、「自分がウイルスを運んで利用者さんに感染させてしまったらどうしよう」という不安は大きなストレス要因です。

特にCOVID-19流行時には、そのプレッシャーから休職者が出たり、家族から勤務を止められるケースもありました。

こうした不安に対処するには、まず正しい知識と対策を身につけることが基本です。

標準予防策を実践していればリスクは低減できると理解することで、必要以上の恐怖心を和らげる効果があります。

「きちんとやるべきことをやっている」という自信が、不安を抑える拠り所になります。

万一感染させてしまった場合のストレス

それでも、もし自分の担当利用者さんに感染が発生したり、あるいは自分自身が感染して他の利用者さんに二次感染させてしまった場合、強い自責の念に駆られるかもしれません。

そんな時は決して一人で抱え込まず、上司や同僚に相談しましょう。

感染は誰のせいとも言い切れない部分も大きく、必要以上に自分を責めるとメンタル不調につながります。

事業所内で事例検討を行い、「次にどう防ぐか」に焦点を当てて前向きに対策を練ることが、心の整理にも役立ちます。

また場合によっては専門の相談窓口(介護職向けメンタルヘルス相談など)に繋ぐことも検討してください。

クレーム対応の精神的負担

感染症に関するクレームは職員に大きなストレスを与えます。

「ヘルパーが持ち込んだのでは」とご家族に非難されたり、ネット上で心ない書き込みをされたりするケースもあります。

こうした理不尽なクレームに対しては、組織として職員を守る姿勢が必要です。

まず事業所内で苦情対応責任者を決め、職員個人が矢面に立たないようにします。

対応にあたっては事実関係を丁寧に確認しつつ、必要以上に相手に迎合せず、しかし誠意は示すというバランスが大切です。

職員自身が対応に困ったら、すぐ上司に報告・相談し、チームで対応策を考えるようにしましょう。

一人で抱え込まないことが肝心です。

長引く緊張状態への対策

感染流行が長期化すると、現場は張り詰めた状態が続き心身の疲労が蓄積します。

ときには意識して休息とリフレッシュを取り入れることも必要です。

職員同士で声を掛け合い、有給休暇の取得や勤務シフトの調整で休みやすい環境を作りましょう。

管理者は職員の表情や言動にいつもと違う様子がないか目を配り、早めに声かけを行います。

「どう、ちょっと疲れてない?」といった何気ない対話が、本人が抱える不安やストレスのサインを察知するきっかけになることもあります。

また厚生労働省からはメンタルヘルスサポートガイドも出ています。

そうした資料も参考に、セルフケア(自分でストレスに気づき対処する)やラインケア(管理者による部下ケア)を推進してください。

「お互い様」の支え合い

不安や緊張感を和らげるには、仲間との些細なコミュニケーションが大切です。

コロナ禍では職員同士の雑談すら減りがちでしたが、「ちょっと聞いてよ~今日大変だったんだから」と気軽に話せる雰囲気が心の支えになります。

現場で頑張る職員に対して、利用者さんのご家族や地域の方々から温かい応援の言葉をいただくこともあります。

そうした声はぜひ皆で共有し、「自分たちは支えられている」という実感を持ちましょう。

社会に役立っているという誇りが、困難を乗り越える力になります。

介護職員の心のケアは、決して怠ってはならない感染対策の一環です。

職員が心身ともに健康でなければ、利用者さんに質の高いケアを提供し続けることはできません。

管理者も職員自身も、お互いの心の健康に関心を払い、「頑張り過ぎない」「助けを求めて良い」職場風土を築いていきましょう。

困ったときには一人で抱え込まず、周囲と支え合って乗り越えることが大切です。

明日から使える行動チェックリスト

感染症対策は一朝一夕に完璧になるものではありませんが、基本の積み重ねが「うつさない・広げない」現場を作ります。

最後に、本記事の内容を踏まえた明日から使えるチェックリストを示します。

自身の行動を振り返り、できていること・明日から実践することを確認してみてください。

☑ 手洗い・手指消毒できていますか?

  • 利用者宅に入る前後、ケアの前後に手指衛生を行っている。
  • 指先や親指周り、手首まで丁寧に洗浄・消毒している。
  • ポケットや車内に速乾性消毒剤を常備し、すぐ使えるようにしている。

☑ マスク・防護具を正しく使えていますか?

  • マスクは常に鼻まで正しく着用し、外出時・サービス提供時は外さない。
  • 手袋やエプロンは利用者ごとに交換・廃棄し、使い回していない。
  • 防護具の着脱手順を守り、外した後の手指消毒も欠かさない。

☑ 「媒介者」にならない工夫をしていますか?

  • 複数宅訪問時、訪問順や移動経路に配慮している(リスク高い訪問は最後に回す等)。
  • 訪問と訪問の合間に必ず手指消毒を行っている。
  • 使用済みおむつやエプロンはその場で密封廃棄し、持ち歩いて周囲を汚染していない。
  • 事業所からの帰宅前にユニフォームを着替え、自宅にウイルスを持ち込まないようにしている。

☑ 利用者の健康状態に気を配れていますか?

  • 毎回訪問時に「今日はお変わりないですか?」と体調を確認している。
  • 少しでも発熱や嘔吐等の兆候があればすぐに管理者に報告している。
  • 利用者やご家族にも検温習慣の協力を依頼し、情報を共有している。

☑ 異変時の対応手順を把握していますか?

  • 利用者に症状が出た際の連絡先(主治医・ケアマネ・上司)を把握している。
  • 事業所内の報告フロー(誰にまず連絡するか)を理解している。
  • 保健所や行政への報告基準を知っており、必要時に対応できる準備がある。

☑ 家族・関係者との連携は十分ですか?

  • 平時から家族に感染対策への協力依頼や情報共有を行っている。
  • 家族から不安や疑問の声があれば真摯に耳を傾け、説明している。
  • 感染発生時には家族・関係者へ迅速に状況報告し、今後の対応を説明する準備がある。

☑ 自分自身の健康管理はできていますか?

  • 出勤前に毎日検温し、少しでも体調不良なら無理せず報告・休養している。
  • 十分な睡眠と栄養を取り、免疫力維持に努めている。
  • インフルエンザなど予防接種を受けられるものは積極的に接種している。
  • ストレスを感じたら同僚や上司に相談し、心のケアにも気を配っている。

チェックはいかがでしたか?

一つひとつは当たり前のことに思えるかもしれません。

しかし、感染症対策は「当たり前の徹底」が何より威力を発揮します。

ぜひ明日から、いや今日からでも、上のチェックリストを意識して日々のケアにあたってください。

訪問介護職員一人ひとりの実践が、「うつさない・広げない」安心安全な介護サービスにつながります。

利用者さんもご家族も安心して在宅生活を送れるよう、皆さんの力で感染症を寄せ付けない環境を作っていきましょう。

おわりに

いかがだったでしょうか。

感染対策は、一人ひとりの「意識」と「行動」かってます。

特別ことなくも、「いつも通り手洗いしっかり行う」「マスク正しく着ける」「体調配る」など、基本積み重ね大きな防波堤となります。

利用さん、家族、職員、みんな心して過ごせる環境守るは、日々小さな注意と、もしも冷静対応大切です。

研修を通して、「うつない・ない」ため具体確認し、現場かしていしょう。

そして、とき一人抱えず、チーム支え合う気持ち忘れに。

感染向き合うことは、介護プロとして責任あり、誇りでもあります。

今日ことが、皆さん現場より安心・安全ものすることってます。

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悩んでいる中年女性
このままじゃヤバい!介護職が抱える老後とお金の問題【不安解消の為の7つの方法】低賃金での生活が続き、物価は上がり続ける一方、将来に対する漠然とした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。この記事は、そんな悩みを少しでも解消できるように節約・資産運用(iDeCo、NISA)・お金に関するセミナーの受講・ポイ活・中高年の婚活・副業・転職の7つについてお伝えします。...
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介護士の資格取得/スキルUP/転職について記事を書きています。 作業療法士/介護福祉士/ケアマネージャー資格等の保有