筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
読者さんへの前おきメッセージ
介護現場は、利用者さんの個人情報を多く取り扱います。
また、トイレ介助や入浴介助で利用者さんのプライバシーに関わることが多い仕事です。
長年、ケアの仕事に関わると「どこまでがプライバシーの侵害なのか」、「プライバシーの侵害って具体的にどういうことか」がわからなくなってきます。
そして、知らず知らずのうちに、とんでもないプライバシーの侵害をしてしまっていることもあります。
よって、年に1度【プライバシー保護の取り組みに関する研修】を実施することは大変意味があり、利用者さんやスタッフ、そして会社を守る上で重要な研修になります。
この記事を読む価値
- グループワープを入れると30分程度の研修にすることもできます。
- コピーして、そのまま研修の資料とすることができます。
- 難しい表現は省いているので、誰でも理解できる内容です。
では早速、見ていきましょう。
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プライバシーとは
まず、「プライバシーとはなにか」についてみていきます。
辞書で調べてみると、以下のような意味になります。
そして、プライバシーの侵害は、次の4項目に分けることができます。
- 私生活への侵入
- 個人情報などの公開
- 誤った印象を与えるような事実の公表
- 氏名・肖像などの無断使用
もしプライバシーの侵害を続けていると、利用者さんとの信頼関係が崩れるだけではなく、あなたや会社が訴えられてしまう可能性もあります。
そのため、サービスを提供する中でプライバシーを侵害しないよう、配慮しながらかかわる必要があります。
また介護職は、利用者さんの生活に深くかかわる仕事であるため、多くの個人情報を取り扱います。
よって、ご本人またはご家族の個人情報を、漏らさないよう注意することも大切です。
「個人情報の保護」については、こちらの記事をご覧ください。
【介護施設】個人情報の保護研修の研修資料【個人情報利用の同意書のひな形あり】
そもそも、介護施設では完璧にプライバシーが守られない!
介護現場では、完璧に利用者さんのプライバシーを守ることはできません。
介護現場では、利用者さんが「いやだ!」と思っても、せざるを得ないことがあります。
例えば、次のようなことがあげられます。
- 事故防止を目的に様々な行動を監視、もしくは禁止する。
- 入浴介助の際に、見守りをする。
- 業務時間の都合で、こちらで介入する。
- 排尿や排便をしている姿を安全のため見守る。
- 排尿や排便を失敗した際、こちらで介入する。
- 送迎の際に部屋の中まで迎えに行く。
- 入所して介護を受けると、個人の自由な行動が制限される。
高齢者は日常生活において、自分のことが自分で出来なくなり、やむなく介護を必要とする状態に陥ります。
介護をお願いするということは、自分の身体や生活の場を他人に見られ干渉されることで、精神的な苦痛を味わうことや、職員に気を遣い我慢する状況が発生するということです。
介護に携わる職員は、そのことを理解し、必要以上に利用者さんのプライバシーが侵害され、人としての尊厳が失われないように注意が必要です。
プライバシーを侵害しないためのチェックポイント
チェックポイントを確認しながら、
普段、プライバシーの侵害に当たるようなことをしていないか、改めて見直してみましょう。
- 衣類の着替えは、必要に応じてほかの人に見えないよう配慮しているか
- トイレ誘導や排便排尿状況などを、他の人に聞こえるぐらい大きな声で伝えていないか
- トイレや脱衣所のドアを開けたまま介助していないか
- 利用者さんから同意を得ずに、利用者さんの鞄をあけていないか
- 居宅内へ許可なく上がっていないか
- 個人情報の記載された書類が散乱していないか
- 利用者さんの個人情報を、他の利用者さんや自分の家族、友人などに話していないか
- 「そろそろトイレに行きましょうか」と他の利用者さんの前で、大きい声で誘っていないか
- 「この人、嚥下障害があるから…」、「この人認知症入っているから…」と大きい声で利用者の症状を言っていないか
- 利用者さんのオムツを交換する時、カーテンを開放したままで行っていないか
- 利用者さん(またはご家族)が病気になったことや亡くなった場合、ご家族の許可なく他の利用者さんに言っていないか
- 利用者さんの家族状況や住所などを、他の利用者さんに聞こえる場所でスタッフ同士で話していないか
- 業務上知った情報(利用者さんの情報など)をSNSで投稿していないか
リーダーや管理職は、次のような項目もチェックしていきましょう。
- 定期的にプライバシー保護に関する研修を行っているか
- プライバシー保護に関するマニュアルが整備されているか
- 職員が、プライバシーに配慮した声かけを行っているか(不適切な声掛けになっていない)
- 特に入浴・排泄介助の際、プライバシーに配慮して介助しているか(不適切なケアになっていない)
- 自施設の新聞やSNS、ホームページなどに利用者さんの写真や動画をアップさせる時は、ご本人やご家族の許可を取っているか
- 防犯カメラを設置するときは、ご本人やご家族の許可を取っているか
- 個人情報の記載された書類が散乱していないか
- 外部研修等で事例発表をする際、個人が特定できないように配慮しているか
もし研修でグループワークをするなら、
「普段の業務で、これはプライバシーの侵害ではないかな?ということを挙げてみましょう」
という題で、15分程度話し合ってみてはいかがでしょうか。
介護現場のプライバシーを考える
介護度が重度化するほど、個人のプライバシーは無くなっていきます。
3つのパターンに分け、プライバシーのことを考えてみましょう。
要支援者(軽度介助者)の場合
このレベルでは、見守りによる介助が中心になります。
このような方には、危ない時に「気をつけてくださいね。」「大丈夫ですか?」と声をかけ、必要時に対応することで解決することが多いです。
しかし伝え方によっては、
「健康な自分が歩いているだけで、『気を付けてね。』と何度も心配されるから億劫だ」と感じる方もおられます。
他にも、
「トイレに行くとき、『どこに行くんですか?大丈夫ですか?』と何度も心配されるのが嫌だ」、
「『段差があるから、危ないですよ』と何度も言われるとムッとする」、
などと感じます。
自分の行動に対してあまり干渉されると、いい加減にほっといて欲しいと怒り出すことは当然です。
要支援者の場合はまだまだ自立していることが多く、できる限り人には頼りたくないと考えている方がほとんどです。
よって過剰な安全確認や、できない前提の対応は、その利用者さんのプライバシーを侵害していることになると理解しておく必要があります。
要介護度1~2(中等度介助者)の場合
要介護1~2というレベルは、
- 転倒のリスクがある
- 認知症による物忘れがある
- 入浴や更衣動作に若干の介助が必要
このような段階です。
利用者さんによっては、次のように感じる方もおられます。
- 送迎の際は、できるだけ自宅内を見られたくない
- 入浴の際、他人に裸を見られるのが恥ずかしい
- 介護職員にいろいろと確認や質問を繰り返され、億劫
- 自分の行動に、見守りや介助が必要となり自由が無い
- 排泄時には、自分の見られたくない姿を他人へさらしている
利用者さんが介護に対し拒否をされたり、腹を立てる様子は 、プライバシーの侵害からの当たり前の反応であることを常に念頭に置いておくべきです。
苦痛の無い生活を送れるよう配慮が必要になってきます。
《よくあるエピソード》
トイレ介助の時に介護職員が、「終わったらブザーを押して教えてくださいね。」「立ったら危ないから、座ったまま呼んでくださいね。」と利用者さんに声を掛け、その場を離れた。
結局、利用者さんから呼んでもらえず、気になって確認するとトイレで転倒していた。
介護職員は利用者さんへ、「だから危ないってさっき言ったのに!」と言った。
《問題点》
介護職員はよく、「高齢者は自分が危ないことをわかっていない!」と決めつけ対応している場合がよくある。
実際は、「恥ずかしい」、「干渉されたくない」、「人に迷惑を掛けたくない」という理由から、自分で解決しようという行動であることを理解しておく必要がある。
危ない・出来ない前提の声かけや対応をしている場合、さらに事故が増える結果となる。
要介護度3~5(重度介助者)の場合
要介護3~5というレベルは、
- 移動時は、車いすにしても歩いてにしても、介護職員の介助が必要となる
- 認知症が重度化していて、行動全てに介護職員の見守りや監視が必要となる
- 自分が望んでやりたいことは、実現できないことが多い
このような段階です。
利用者さんによっては、次のように感じる方もおられます。
- 入浴では、他人に体を洗われ情けない
- 排尿や排便の自由がなく、その排泄物を職員に見られるのでいやだ
- 食事はミキサー食などに限定され、自分の好きな物を食べる楽しみは失われる
- 介護職員がベッドを設置している寝室まで入ってくるため、私生活の場を他人に見られる
- 施設へ入所すれば他人との共同生活を送り、時間の区切られた自由の少ない環境で過ごす
このレベルの方は、自由な選択による活動はほとんど失われています。
また自分の恥ずかしい姿を介護職員にゆだねる必要があります。
このようなことから、私たちは普段から、利用者さんの声に耳を傾け、なじみの人間関係を築くことが必要です。
要介護者が精神的に苦しむことのないよう心がけましょう。
プライバシーを侵害しないための予防策
職員の「これぐらいなら…」という気持ちが、利用者さんにとってはプライバシーの侵害に感じることが多々あります。
それが続くと、ケアを行う上で必要不可欠な信頼を失うだけでなく、ほかの利用者さんやご家族、ケアマネジャーからも不信感を持たれる恐れがあります。
プライバシーを侵害しないためには、次の項目を意識するようにしましょう。
- 自分自身の基準に当てはめない
- プライバシーーの侵害の感じ方は、人によって違うため、最も敏感な人を基準にする
- 排泄ケアや入浴介助は、プライバシーを侵害しやすい場面であるため、より注意して行う
また、利用者さんの個人情報や会社の情報等の守秘義務を守ることは、退職した職員にも義務付けられています。
就業時に説明し、誓約書を交わしておきましょう。
そして「どのようなことがプライバシーの侵害になるのか、説明を受けていない」といわれないためにも、就業時には一緒に契約書の内容を確認し、具体的なことまで伝えている方がよいかもしれません。
職員の個人情報とプライバシー
当然ですが、一緒に働く職員にもプライバシーがあり、個人情報を守る必要があります。
職員同士の会話で知り得た情報を、安易に利用者さんへもらしてはいけません。
「Aさんは子供が何人いる」、「Bさんは離婚経験がある」、「Cさんは〇〇というところに住んでいる」などを、会話の流れで漏らしてしまう人もいます。
ちょっとしたことで「あの人は信用できない人」というレッテルが張られ、人間関係が崩れてしまいます。
人間関係が崩れると、職場の雰囲気が悪くなり、仕事が苦痛になります。
その影響は介護の質の低下として利用者さんへ現れてしまいます。
働きやすい職場、利用者さんへ良いケアを提供できる職場を目指すなら、施設で働く職員の個人情報とプライバシーが守るよう心がけましょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。
自分がされたくない、見られたくない、言われたくない、望まないことは、子供も大人も高齢者も皆同じです。
介護の仕事は常に、利用者さんのプライバシーへ介入しているという自覚が必要です。
施設の職員に頼らざる得ない利用者さんは、弱い立場にあるため、もしかすると職員の顔色をうかがい、我慢をしているかもしれません。
利用者さんのプライバシーが無くなると言うことは、人としての尊厳が失われることを意味しています。
私たちは利用者さんからサービス料を頂いているということを忘れず、プロとして利用者さんの尊厳が守られた介護を提供しなければなりません。
それではこれで終わります。
この研修記事が御社の運営に少しでもいかしていただければ幸いです。
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