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非常災害時の対応

【完全版】非常災害時の対応に関する研修【まとめ】

とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。【非常災害時の対応に関する研修】のまとめ記事を作りました。

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

日本は地震や台風など自然災害が多い国です。

2011年の東日本大震災では岩手・宮城・福島の介護施設59カ所が被災し、入居者と職員あわせて578名もの方が亡くなったり行方不明になる深刻な被害が出ました​。

また1995年の阪神淡路大震災では、全死亡者のうち高齢者(65歳以上)が50%以上を占めています​。

こうした過去の経験からも分かるように、大規模災害時には高齢者が特に被害を受けやすく、介護の現場では入念な防災対策が不可欠です​。

本記事では、介護職員の皆さんに向けて非常災害時の対応研修のポイントをやさしく丁寧にまとめました。

日頃の備えから災害発生時の初動対応、避難訓練の具体例、他施設の事例と教訓、そして非常時の連絡体制づくりまで、実践に役立つ知識を網羅しています。

大切な利用者さんの命を守るために、ぜひ一緒に確認していきましょう。

▼引用元の記事はコチラから確認してみてください▼

車が川に流されている
【介護施設】非常災害時の対応に関する研修【研修資料一覧】介護施設の「情報公表調査」では【非常災害時の対応に関する研修】の実施の有無が問われています。この記事では【非常災害時の対応に関する研修】の資料となる記事を複数紹介しています。是非、自施設にあった資料をお選び下さい!...

 

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総まとめ 災害研修

この記事を読む価値

  • 本サイトの「プライバシー/個人情報の保護の取り組みに関する研修」の資料の内容が全て網羅されています。
  • 大ボリュームで、読み進めるだけで30分~40分程度の研修にできます。
  • 極力、難しい表現は避けてあります。

 

早速、見ていきましょう。

災害への備えと基本方針

ヘルメットをかぶった高齢者を避難誘導している介護職

非常災害に直面したとき、何より大切なのは「自分と利用者さんの命を守る」という基本方針です。

まず職員自身の安全を確保し、次に利用者さんの安全を確保します​。

自分が被災してしまっては救える命も救えませんので、「まずは自分、そして利用者さん」という優先順位を常に心に留めましょう​。

その上で、可能であればサービスの継続や早期再開も目指します​。

災害時には状況判断を迫られる場面が数多くあります。

上司や周囲の指示を待つだけでなく、現場にいる職員一人ひとりが冷静に判断し行動する心構えが必要です​。

例えば夜間など管理者不在の時間帯に大地震が起きれば、当直の職員が即座に対応しなければなりません。

「自分の判断で対応していいのだろうか…」と不安になるかもしれませんが、平常時からマニュアルを整備し訓練しておけば自信を持って動けます

施設ごとの詳しい手順は各事業所で補う必要がありますが、本記事の内容はその土台となる共通部分です​。

大災害に備えて職員全員で共有し、非常時に落ち着いて行動できるよう準備を進めましょう。

日頃からできる防災対策

災害の被害を最小限に抑え、混乱なく対応するためには日頃の備えが欠かせません​。

普段から、次の5つの対策をコツコツ進めておきましょう。

①ハザードマップの確認

まず、自施設の立地の危険性を把握します。

自治体が公開しているハザードマップを確認し、地震の揺れやすさ、洪水・土砂災害のリスク、避難場所の位置などを職員皆で共有しましょう​。国土交通省:ハザードマップポータルサイト

地図上で災害時の被害想定や避難ルートを視覚的に確認できるので、定期的に見直すことが大切です。

万一に備えて、避難経路は複数確保し、主要なルートが使えない場合でも代替ルートで避難できるようにしておきます​。

②必要物資の備蓄

ライフラインが途絶えても一定期間しのげるよう、最低3日分(できれば1週間分)の食料・飲料水を備蓄します​。

目安として水は1人1日3リットル、食料はアルファ化米やレトルト食品、缶詰など調理不要で長期保存できるものを準備します​。

その他にも、非常用トイレ(凝固剤入りの簡易トイレ)​、常備薬や救急用品、懐中電灯・ランタン、予備電池、携帯ラジオ、マスクやアルコール消毒液、毛布など、災害時に役立つ物品をリスト化して定期的に点検しましょう​。

特におむつや生理用品、入れ歯洗浄剤など高齢者の生活必需品も忘れずに備えてください。

③施設設備の安全確保

建物自体の耐震性を定期的に確認し、必要なら耐震補強を検討します。

1981年以前の古い耐震基準の建物は要注意です​。

館内では、家具や設備が地震で転倒・落下しないよう固定具を取り付けておきます​。

棚やテレビ、冷蔵庫など重量物はしっかり壁や床に固定し、窓ガラスには飛散防止フィルムを貼って破片が飛び散らないようにしましょう​。

また、大雨が予想される季節前には排水溝や側溝の掃除をして水はけを良くし、土のう(最近は軽い吸水式のものもあります)を準備しておくと浸水被害の軽減に役立ちます​。

④非常用電源の確保

停電に備えて、発電機や蓄電池、ソーラーパネルなど非常電源を用意できれば理想的です。

難しい場合もモバイルバッテリーを人数分揃え、各自の携帯電話や介護機器(吸引器や酸素濃縮器など)が一定時間使えるようにしておきましょう​。

電池式の照明器具やラジオも忘れずに準備します。

⑤日常点検と訓練

非常ベルや消火器、スプリンクラーなど防災設備が正常に動作するか定期点検します。

いざという時に「消火器の場所を知らず使えなかった」「非常扉が物で塞がって開かなかった」とならないよう、職員間で設備の位置や使い方を共有しておきましょう。

非常時の連絡体制づくり

災害対応では情報伝達が命綱です。

非常時にスムーズに連絡を取り合える体制を平時から構築しておきましょう​。

次の4つのポイントを押さえてください。

①緊急連絡先リストの整備

職員や関係機関の連絡先を一覧にまとめ、すぐ取り出せる場所に備えておきます​。

このリストには職員全員の電話番号はもちろん、利用者さんのご家族の連絡先、協力医療機関や担当ケアマネージャー、消防・警察・行政機関の緊急連絡先、電気・ガス・水道会社などライフライン各社の緊急窓口番号も含めます​。

紙ベースで保管するとともに、スマートフォンやクラウド上にもデータを保存し、複数の手段で参照できるようにしましょう。

②連絡網の整備

非常時に職員同士で安否確認・情報共有するための連絡網を決めておきます。

例えば「管理者 → 各部署リーダー → 現場職員」というように電話連絡の優先順位を定め、誰が誰に連絡するか明確にしておきます。

深夜帯に災害が起きた場合は当直職員がまず管理者に報告し、管理者が他の職員へ一斉連絡する、といった流れです。

最近はLINEグループなどSNSやメールを活用する施設もありますが、スマホが使えない状況も想定し電話やFAX、無線機など複数の通信手段を準備しておくことが大事です​。

電話が通じにくい災害直後はショートメールや災害用伝言板(171)サービスが有効な場合もあるので、職員に周知しておきましょう。

③家族との情報共有

利用者さんのご家族にも、非常時の連絡方法について事前に説明しておきます。

緊急連絡先は複数取得し、たとえば「自宅と長男さん夫婦の連絡先」「勤務先と実家の連絡先」のように、一方が不通でも別ルートで連絡がつくようにしておきます​。

災害発生後は可能な限り速やかにご家族へ利用者さんの安否を知らせます。

電話がつながらない場合でも、施設のホームページやSNSで状況を発信したり​、地域の防災無線や自治体の安否確認システムに登録しておくことで、間接的に無事を伝えられることもあります。

日頃から「○○市の避難情報メールサービス」に家族も登録してもらう、LINEのオープンチャットで非常時専用グループを作っておく等、工夫して情報共有の手段を用意しましょう。

④指揮系統の確認

災害対応時の指揮命令系統も決めておきます​。

平時は施設長がトップでも、災害で不在の場合は誰が代行するのか、現場では誰が指示を出すのか等をあらかじめ決め、職員に周知します。

非常時には一人ひとりが判断して動く必要がありますが、最終的な判断を下す責任者が誰か明確になっていると現場が混乱しにくくなります。

防災訓練の重要性と具体的な進め方

防災訓練は大変ですが、万一の時に慌てず対応するためには必ず必要です。

特に重度介助を要する高齢者が多い施設では、自力歩行が困難な方や認知症の方もおり、様々な状況を想定した訓練が欠かせません​。

訓練をせずにいきなり本番を迎えてしまうと、現場は大混乱に陥ることが予想できます​。

逆に、繰り返し訓練を行っておけば、非常時にも職員一人ひとりが落ち着いて自分の役割を果たせるでしょう。​

訓練計画の立て方

防災訓練を効果的に行うには、事前に綿密な計画を立てておくことが重要です。

訓練計画では次の点を明確にしましょう​。

  1. いつ(日時・時間帯)
  2. どこで(訓練を行う場所やフロア)
  3. どのような状況で(災害の種類・規模、発生時のシナリオ)
  4. 誰が(参加する職員と利用者)
  5. どんな役割で(各職員の担当業務)
  6. どのように行動するか(具体的な手順)

たとえば訓練シナリオとして「○月○日○時に震度6強の地震が発生し、停電・断水状態」というケースを設定します。

そして「そのとき夜勤者2名が勤務中で他職員は不在」というように時間帯も具体的に決めます。

次に、各職員に「Aさん:利用者の安否確認」「Bさん:非常口確保」「Cさん:非常用持出品の準備」といった役割分担を割り当てます​。

役割は予め決めておけば、実際の訓練時に「私は何をすれば…?」と戸惑うことがありません。

訓練シナリオの具体例(夜間想定の地震訓練)

それでは具体的な訓練の流れを見てみましょう。

ここでは夜間に大地震が発生した場合を想定した訓練例を紹介します。

夜勤者が少ない時間帯の訓練は特に重要で、実際に宿泊を伴う介護施設では年2回の避難訓練のうち1回は夜間を想定した訓練が義務付けられています​。

〈想定シナリオ〉
「令和○年○月○日 午前2時ごろ、入居施設で震度6強の地震発生。館内は停電し、一部出火の恐れあり。夜勤職員2名体制、入居者50名就寝中。」

▼避難訓練の手順例▼​

①地震発生~初動対応(担当:夜勤職員A・B)

激しい揺れを感じたら、まず職員自身が頭を守り机の下に避難します​。

揺れが収まったら迅速に館内の安全確認を開始しましょう。

まず各居室を巡回し、利用者さんと職員の無事を確認します​。

「大丈夫ですか?」と声をかけて回り、ケガ人や動けない人がいないか確認します。

同時に、停電で暗い場合は懐中電灯を使い、エレベーターに閉じ込められた人がいないかもチェックします​。

②負傷者の対応(担当:夜勤職員A・B)

もし負傷者がいればただちに応急手当を行い、必要に応じて救急車を要請します​。

幸い軽傷で済んでいる場合も、後の避難行動に支障がないように手当てしておきます。

また、医療的ケアが必要な方については酸素濃縮器や吸引器など医療機器が正常に作動しているか確認します​(停電で使えない場合は予備電源に切り替える)。

③避難経路の確保と避難判断(担当:夜勤職員A・B)

出火の可能性がある場合は初期消火を試みつつ、避難準備に移ります。

避難経路として予定している廊下や非常口が、倒れた家具や破片で塞がれていないか確認し、安全を確保します​。

建物に損傷がある場合は、状況を見て館内待機か外部避難か判断します。

余震の心配がある場合は、一時的に中庭や駐車場など屋外の安全な場所へ避難する選択も考えられます。

④避難誘導(担当:応援職員C・D・他)

安否確認の報告を受けた管理者や他の職員が駆けつけてきたら、増援要員と合流し本格的な避難誘導を行います​。

あらかじめ決めていた避難ルートが実際に使えるか再度確認し、問題なければ利用者さんに避難を促します​。

ベッドから車椅子や担架への移乗が必要な方は複数人で協力し、可能な限り速やかに建物外の安全な場所へ移動します。

避難先(例えば屋外避難場所や指定避難所)には職員のうち1~2名を先に行かせ、到着した利用者さんを受け入れる準備をさせます​。

⑤人員と物資の最終確認(担当:管理者)

全員避難が完了したら、取り残されている人がいないか最終チェックします。

同時に、非常持ち出し袋や救急箱、水・毛布など必要物資を持ち出せているか確認します​。

停電で館内が暗い場合もあるので、事前にまとめておいた備蓄品セットを持ち出すことで対応がスムーズになります​。

ここまでで初動対応は完了です。

このような訓練シナリオは一例ですので、各施設の状況に合わせて手順や役割をカスタマイズしてください​。

重要なのは、毎回同じ想定ではなく様々な災害パターンを練習することです​。

今回は夜間の地震を想定しましたが、日中の火災を想定した避難・通報訓練や、台風接近に伴う水害想定訓練なども交互に実施しましょう​。

法律でも年2回以上の避難訓練実施が義務付けられていますが、単なる形骸化した訓練にせず、毎回新たな課題を発見して改善する機会にすることが大切です。

訓練後の振り返りと改善

訓練を実施したら、必ず参加者全員で振り返り(レビュー)を行います​。

うまくできた点・課題に感じた点・ハッと気づいたことなどを出し合い、次回までに改善すべきことを整理しましょう​。

「非常口の鍵が固くて開かなかった」「車椅子担当の職員が足りなかった」「連絡体制に時間がかかった」等、問題点が見つかったら対策を検討し、防災マニュアルや事業継続計画(BCP)に反映させます​。

訓練のたびにPDCAサイクルを回すイメージで、現場の防災力を高めていきましょう。

また、地域との連携も重要です。

他施設や地域住民と合同で避難訓練を行えば、より実践的で得られる知見も増えます​。

自治体の防災訓練に参加したり、地元の消防署・警察署と相談してアドバイスをもらったりするのも有効です​。

高齢者施設は地域の指定福祉避難所になるケースもありますので、平時から近隣との協力体制を築いておきましょう​。

災害が発生したときの対応

実際に災害が起こってしまった場合、私たち介護職員は何を最優先に行動すべきでしょうか。

ここでは地震と台風・水害に分けて、それぞれの対応ポイントを整理します(火災等その他の災害についても触れます)。

地震発生時の対応ポイント

突然大きな地震が発生したら、まず身の安全の確保です。

強い揺れを感じたら「まず低く、頭を守り、動かない」という基本に従いましょう。

職員は素早くテーブルの下にもぐり、利用者さんにも可能な範囲で机の下やベッド脇に伏せるよう声かけします​。

頭部を座布団や枕で保護できれば理想的です。

揺れが収まった後は、迅速に安否確認を行います​。

館内の利用者さん全員と職員の無事を確認し、負傷者がいれば応急手当をします​。

同時に火の始末も重要です。

キッチンや居室で火気を使用中だった場合は揺れの後に火災が発生していないか確認し、火事があれば初期消火に努めつつ119番通報します。

避難の必要性判断も速やかに行います。

建物に甚大な被害がなく安全が保たれているなら、無理に屋外に出ず館内で様子を見る「留まる避難」も選択肢です。

一方、建物倒壊の危険や火災の発生があれば、あらかじめ決めた経路で屋外へ避難します。

避難時にはエレベーターは絶対に使わないようにします​。

停電で停止・閉じ込めの恐れがあるうえ、余震で閉じ込められたら救助が困難です。

必ず階段を使い、足の不自由な方は職員が複数名でサポートしましょう。

避難誘導では、自力で避難が難しい方への支援に特に注意します。

車椅子の利用者さんは普段は自走できても、地震後は床に物が散乱して動けなくなる可能性があります​。

また認知症の方はパニックになったり避難自体を拒否される場合もあります​。

平時に決めておいた方法(おんぶや担架、一時待機場所への誘導など)で、落ち着いて対応しましょう​。

夜間や早朝など職員が少ない時間帯は特に迅速な対応が難しくなるため、周辺に住む職員に応援を要請することも検討してください​。

幸い全員の安全が確保できたら、一か所に集まって今後の対応を協議します​。

施設内で待機する場合でも、余震で避難口が歪まないようドアを開けておく、懐中電灯とラジオで情報収集する、毛布を配って体温低下を防ぐ等、できることを行いましょう。

避難が完了した後は、避難所での生活支援が課題になります。

介護施設の入居者さんにとって一般の避難所で過ごすのは過酷です​。

バリアフリーでない環境や普段と違う生活リズムで、体調を崩すおそれがあります​。

特にトイレの問題や食事の確保は深刻で、車椅子利用者や介助が必要な方には避難所の簡易トイレは使いにくく、普段ミキサー食や経管栄養の方には食事の提供も難しい場合があります​。

こうした状況に備え、非常用トイレの備蓄​や流動食のストック、医療機関との連携など事前準備が重要です​。

また避難所では持病が悪化したり感染症のリスクも高まります​。

職員が定期的に体調チェックを行い、必要に応じて医療支援を受けられるよう調整しましょう​。

避難所への移動が困難な利用者さんが多い場合、地域と相談して施設自体を福祉避難所(介護が必要な人向けの避難スペース)として活用することも考えられます。

平時から自治体との話し合いを持ち、災害時に支援物資や要員の派遣を受けられる協定を結んでおくと安心です。

台風・大雨(水害)時の対応ポイント

台風や豪雨は事前にある程度予測できる災害です。

「そのうち来るだろう」と軽視せず、早め早めの準備と対応を心がけましょう​。

まず台風シーズンには、日頃から気象庁のウェブサイトやハザードマップを定期的にチェックしておきます​。国土交通省:気象庁ウェブサイト

台風が接近する1週間ほど前から注意報・警報に留意し、進路次第では計画的に対応を強化します。

台風接近前にやるべきこと​

窓や雨戸をしっかり施錠し、必要に応じてガラスに養生テープや飛散防止フィルムを貼ります​。

古い網戸は外して室内へしまい、強風で飛ばされそうなバケツ・プランター等の屋外物品は屋内へ移動または固定します​。

テレビアンテナやプロパンガスボンベ、看板類も固定を再確認します​。

また断水に備えてポリタンクや浴槽に生活用水を確保し、浸水に備えてトイレや排水口に水のうを置いて逆流を防ぎます​。

避難が必要になった時のため、非常持出品を再点検し、乗用車による移送が困難になる可能性も考えて車椅子や歩行器で移動する経路を確認します。

台風接近時の対応​

自治体から避難情報(避難準備・高齢者等避難開始、避難指示など)が発令されたら、指示に従いましょう。

施設がハザードマップで浸水想定区域に入っている場合、早めに指定避難所や予備の受入先施設へ事前避難することも検討します。

避難する場合、雨風が弱まったタイミングを見計らい、できるだけ明るいうちに行動することが大切です​。

高齢者は移動に時間がかかるため、暗くなってからでは危険が増します​。

ヘルメットや防寒着(長袖・長ズボン)を着用し、靴は長靴よりもスニーカー等(水が入って重くならないもの)を履かせます​。

荷物は両手が使えるようリュックにまとめ、職員は決して一人で行動せず複数人で誘導します​。

車両で移動する場合も、冠水した道路には絶対に入らないでください。

水深わずか40~50cmで乗用車は浮いて流されてしまう危険があります​。

避難ルート上に冠水箇所がある場合は無理に進まず、状況によっては建物の上層階への垂直避難に切り替えてその場でやり過ごす判断も必要です​。

特に要介護高齢者は公的避難所まで歩くのが困難な場合も多いので、地域包括支援センターや自治体と連携し、福祉避難所や代替の受け入れ先を確保するよう努めます。

事前に近隣の学校や公共施設と協議しておけば、いざという時スムーズに移動できます。

施設に留まる場合でも、暴風雨の間は窓から離れ、カーテンを引いて万一ガラスが割れても飛散しにくくします。

停電時は前述の非常電源で照明を確保し、エアマット等を活用して床で休めるスペースを用意します。

浸水のおそれがあるエリアでは、高所へ利用者さんを誘導し、安全を確保します​。

排水溝からの逆流には引き続き注意し、適宜水を汲み出すなど応急対応を行いましょう。

台風通過後も油断禁物です。

周囲に倒木や電線の切断がないか確認し、避難中の場合は安全を確かめてから施設へ戻ります。

その他の災害への備え

火災や津波、土砂災害、豪雪なども地域によっては想定されます。

基本的な優先順位(生命の安全最優先)は同じですが、それぞれの災害に応じた対応マニュアルも用意しておきましょう​。

例えば火災時の初動は「発見・通報・初期消火・避難誘導」が原則です。

火災報知機や職員の発見によって火事に気付いたら「火事だ!」と周囲に大声で知らせ(呼びかけ)、可能なら消火器等で初期消火を試みます​。

同時に119番通報し、利用者さんを安全な場所へ避難誘導します​。

地震と違い火災は放っておくと被害が拡大する一方なので、発見次第すぐ対応する点が重要です。

津波や土砂災害の場合、高台への避難が必要になります。

海沿い・山沿いの事業所では、避難先の地形や移動手段を平時から確認し、避難開始のタイミングを見逃さないよう早めの判断を心がけます。

豪雪による孤立に備えて燃料や食料を多めに蓄えておく、感染症流行に備えて防護具や備蓄食を用意する等、地域特性や季節ごとの脅威にも目を向けてください。

他施設の災害対応事例と教訓

過去の災害から、私たちは多くの教訓を学ぶことができます。

他の介護施設で実際に起きた事例を知り、自施設の備えを見直すヒントにしましょう。

①東日本大震災(2011年)の教訓

前述したように、東北沿岸部では津波により多数の高齢者施設が被災し、多くの尊い命が失われました​。

中には、避難が間に合わず入居者ごと建物が流出した特別養護老人ホームもありました。

この教訓から得られるのは、「想定外は起こり得る」ということです。

津波が来るなんて考えていなかった場所まで大水が襲い、職員も利用者も逃げ遅れてしまいました。

私たちは「ここは大丈夫だろう」と思わず、最悪のケースまで考えて訓練や備蓄をしておく必要があります。

また震災当時、被災地の介護施設では支援物資が届くまで数日間孤立し、職員が残って必死にお世話を続けた事例もあります。

非常時に備えて職員間で助け合う覚悟と、最低限の物資で耐える自助努力が求められることも肝に銘じておきましょう。

②西日本豪雨(2018年)の教訓

西日本各地で記録的な豪雨となった平成30年7月豪雨では、ある老人ホームが堤防決壊による急激な洪水に襲われ、避難が遅れて入居者の方々が犠牲になる痛ましい事例がありました。

ここからの教訓は、「避難情報はためらわず活用する」ことです。

避難指示が出ても「高齢者を動かすのはかえって危険」と留まる判断をする場合がありますが、水や土砂の力は我々の想像以上です。

環境の変化に脆弱な高齢者こそ早めの避難が必要だと認識しましょう。

一方で、同じ豪雨でも別の地域では、職員が自主判断で早朝から避難を開始し全員無事だったグループホームもありました。

「逃げるのが大変だから」と尻込みせず、危険が迫る前に動いたことが功を奏した例です。

このように、状況を的確に判断し勇気を持って決断することが被害を減らす鍵になります。

③熊本地震(2016年)の教訓

熊本地震では夜間帯に大地震が発生し、熊本市内のグループホームで建物が倒壊する事故が起きました。

夜勤の職員2名だけでは満足な対応ができず、多くの入居者が下敷きになってしまったそうです。

この痛ましい事例から学ぶのは、「夜間体制の弱さをどう補うか」です。

夜勤者が少ない時間ほど、地域の協力や複数施設間の応援協定がものを言います。

熊本地震後、ある介護施設では地域ボランティアとの連携を強化し、夜間想定の訓練を増やしたといいます。

また熊本では本震の前に前震があり「もう大丈夫だろう」と思った矢先に本震がきました。

最初の揺れで油断しないこと、余震にも警戒を続けることも重要な教訓です。

このように、他施設の経験は自施設の防災計画を見直す貴重な材料となります。

「自分たちだけは大丈夫」という先入観を捨て、全国の災害事例を学びながら常に計画をアップデートしていきましょう​。

過去の災害を教訓に、備えを強化することが被害を減らす唯一の方法です​。

非常時における情報発信と事業継続

最後に、災害発生後の情報発信と事業継続について触れておきます。

災害時には内部対応で手一杯になりがちですが、状況が落ち着いてきたら外部への情報提供も考えましょう。

施設の被害状況や対応の進捗をホームページやSNSで発信すれば​、ご家族や地域社会に安心を届けることができます。

また、行政や関係機関への報告も忘れずに行います。

被害が大きい場合は介護保険の指導監督機関や業者、ボランティアセンターなどにも連絡し、支援を仰ぎましょう。

事業継続計画(BCP)の観点では、可能な限りサービスを継続または早期再開することが目標となります​。

建物が被災して使えない場合は、近隣の未被災施設と提携して利用者さんを一時受け入れてもらう、デイサービスを休止して人員を入所施設支援に回す、など柔軟な対応が必要です。

幸い施設に大きな被害が無かった場合でも、職員や利用者さん自身が被災して通所できないケースもあります。

そんな時はサービス提供を一時中断し、人命救助と生活支援を優先しましょう​。

状況が落ち着いた後、徐々に通常業務を再開しますが、その際もライフライン(電気・水道・ガス)の復旧状況に合わせて無理のない範囲で行います​。

停電時でも動く設備を使ってお風呂だけでも提供する、食事サービスをおにぎりなど簡易なものに切り替える等、できる範囲で利用者さんの生活を支えます。

職員自身も被災者であることを忘れず、お互いの疲労や心のケアにも配慮してください。

おわりに

非常災害時の対応について、準備段階から発生時の行動まで一気に駆け足でまとめました。

いかがだったでしょうか。

【完全版】と銘打ち、介護職の皆さんに必要なポイントを網羅しましたが、実際の現場では「想定外」を想定する柔軟さも求められます。

大事なのは、「災害はいつか必ず起こるもの」と心得て日頃から備えることです。

記事中でも触れたように、訓練は嘘をつきません。

日常の小さな備えの積み重ねが、いざという時に利用者さんの命と私たち自身の命を守る力になります。

高齢の職員の方でも分かりやすいように心がけて書かせていただきました。

大切なのでもう一度振り返りますが、まずは命を守る行動を最優先に、そして情報と連携を駆使して混乱を乗り切ることがポイントです。

この記事の内容は研修資料としても活用できますので、ぜひ職場で共有し、防災対策の強化にお役立てください​。

皆さんの日々の献身が、非常時にきっと実を結びます。

備えあれば憂いなし―利用者さんもご家族も安心して過ごせるよう、これからも一緒に安全な施設づくりに努めていきましょう。

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介護士の資格取得/スキルUP/転職について記事を書きています。 作業療法士/介護福祉士/ケアマネージャー資格等の保有