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虐待防止

認知症利用者への虐待行為は職員だけの責任なのか?【介護施設の高齢者虐待防止に資する研修】

とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。介護施設で必要な【認知症及び認知症ケア に関する研修】の資料となるブログ記事を作りました。

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

認知症の利用者さんへの対応は非常に大変です。

介護の仕事は、日々、身体的・精神的に負担がかかる中で、一歩間違えると虐待行為につながるリスクも潜んでいます。

現場での虐待は、すべて職員個人の責任として扱われがちですが、実際には複雑な要因が絡み合っている場合がほとんどです。

今回は、認知症利用者さんとの対応中に発生した虐待事例を通して、なぜ虐待が起こってしまうのか、その背景と原因を探り、虐待を未然に防ぐために職場全体で取り組むべきことについて考えていきます。

この記事を読む価値

  • 事例から検証していくのでとてもわかりやすい内容です。
  • 認知症ケアへの理解が深まります。
  • このまま研修資料とすることもできます。

早速、見ていきましょう。

認知症利用者への対応中に発生した虐待行為の事例

高齢者を叩いてしまった介護職員

事例: Mさん(80代男性)は、認知症の症状が進行している特養の利用者さんです。

普段は穏やかに過ごしていることが多いMさんですが、突然怒り出すことがあり、時折他の利用者さんや職員に対して暴力的な態度を示すこともあります。

ある日、職員のNさんがMさんの対応に当たりましたが、その日はNさん自身が家庭の事情で精神的に疲れている状況でした。

Nさんは、日頃から仕事に真剣に取り組んでおり、利用者さんに対して親身に接する姿勢が評価されている職員です。

その日、Mさんが他の利用者さんに対して怒鳴り声をあげ始め、興奮状態に陥りました。

周囲への影響が心配になったNさんは、Mさんを別室へ誘導し、落ち着かせようと試みました。

しかし、MさんはNさんに対して「何するんだ」「出て行け」といった暴言を浴びせ、さらにNさんの腕をひねりながら掴み、抵抗しました。

その後、Mさんはさらに興奮し、Nさんに向かって蹴りを入れようとするなど、より攻撃的な態度を示しました。

普段なら冷静に対応できるNさんでしたが、その日は心身の疲労もあり、つい我を忘れ、Mさんを強く突き飛ばしてしまいました。

Mさんは驚いて転倒し、軽い打撲を負いました。

この行為は通常「虐待」として扱われますが、職員の疲労や精神状態がこうした事態に与える影響も考慮する必要があります。

このような場面で職員個人の責任だけで対処するのが適切か、それとも介護施設全体のサポート体制が必要かどうか等を、見直す必要があるかもしれません。

虐待行為の背景にある複雑な要因

介護現場での虐待行為は、「事故」ではなく「事件」として分類されます。

「事故」とは、本人の意図に反して偶発的に起こるものであるのに対し、「事件」は職員の意図的な行動によって引き起こされるものと見なされます。

しかし、こうした虐待事件がすべて職員の故意によって発生しているわけではなく、複数の要因が複雑に絡み合って起きていることが明らかになっています。

最近の調査によると、虐待行為の原因は次のように5つのパターンに分類されます。

  1. 認知症利用者の対応時に、理性を失って起こす虐待
  2. 事業所全体のモラルが低下し、不適切なケアの蔓延から発生する虐待
  3. 適性を欠く職員が意図的に行う虐待
  4. 家族からのハラスメントに対する報復として行われる虐待
  5. 悪ふざけや悪ノリによって利用者の尊厳を傷つける虐待

このように、虐待行為にはさまざまな要因が絡み合っており、職員個人にすべての責任を負わせるだけでは根本的な問題解決にはなりません。

虐待行為の分析:3つの要因から考える

虐待行為を分析する上で、次の3つの要因を考えます。

  1. 利用者側の要因
  2. 職員側の要因
  3. 環境の要因

それぞれ、具体的にみていきます。

① 利用者側の要因

認知症の利用者さんには、行動・心理症状(BPSD)と呼ばれる症状が現れることがあります。

例えば、突然怒鳴る、大声を出す、攻撃的な行動を取るなどの行為がBPSDの一部であり、職員にとっては大きなストレスになります。

こうした症状が続くと、職員の心の負担が増し、理性的な対応が難しくなることがあるます。

また、利用者さんが体調不良や痛みを抱えている場合も、苛立ちやすくなり、職員への攻撃的な行動を引き起こすことがあります。

周辺症状(BPSD)について詳しく知りたい方は、コチラの記事をご覧下さい。

認知症で困っている女性
認知症及び認知症ケア に関する研修【認知症の症状・認知症ケアについて】認知症という病気は、その人その人で症状や進行度が異なるため、利用者さんの状態に応じた対応が求められます。よって認知症への理解を深めることで、ケアの質が向上し、利用者さんとの信頼関係を築くことができます。また、適切なコミュニケーションやケアを通じて、利用者さんは安心し、穏やかに過ごしていただくことができます。...

② 職員側の要因

介護職員もまた人間であり、体調や精神状態によって対応力が変わります。

特に体調不良のときや私的な問題を抱えているときには、普段よりもイライラしやすくなり、理性的な対応が難しくなります。

最近の研究によると、下痢や消化器系の不調があると、脳が不安を感じやすくなり、理性を保ちにくくなる「脳腸相関」という現象が起こることがわかっています。

これは、体調が悪化すると心理的にも不安定になりやすいことを示しており、介護現場においても注目されるべき要因です。

③ 環境の要因

職場環境や業務手順も、虐待リスクに影響を与える重要な要素です。

特に、職場のサポート体制が不十分で、職員が一人で利用者さんに対応しなければならない状況が続くと、精神的に追い詰められやすくなります。

さらに、適切な業務手順が整備されていない場合、対応が雑になりがちで、利用者さんに不適切な態度を取ってしまうリスクも高まります。

虐待を防ぐための職場での取り組み

虐待行為を防止するためには、職員一人ひとりが自己管理を徹底するだけでなく、職場全体での連携が不可欠です。

虐待リスクを減らすための具体的な対策を5つ紹介します。

① BPSDに対する理解と対応力の向上

BPSDが発生しやすい利用者さんに対しては、適切なケア計画を立て、個別に対応する必要があります。

例えば、周囲が騒がしい環境を嫌う利用者さんには静かな空間を提供するなど、利用者さんのニーズに応じた配慮をしましょう。

② 職員の健康管理と精神的サポート

職員が体調不良の際には無理をせず、他の職員がサポートできる体制を整えることが必要です。

体調不良や私的な問題がある場合、普段は対応できていた利用者さんに対してもストレスを感じやすくなります。

そのため、職員同士で健康状態を把握し、必要なときには助け合う関係性を作っておきましょう。

③ チームでの連携と支援体制の強化

認知症の利用者さんへの対応は、複数の職員が協力して行うことで、虐待のリスクを減らすことができます。

特に、BPSDが激しい利用者さんに対しては、一人で対応せずにチームで連携することで、ストレスを分散し、冷静な対応がしやすくなります。

④ 虐待防止のための教育と研修の実施

職場での虐待防止意識を高めるために、定期的に教育や研修を実施することが有効です。

新人職員には、BPSDへの対応方法やストレス管理のスキルを教え、介護現場での心構えをしっかりと身に付けさせましょう。

そして定期的な研修は、全職員が共通の認識を持ち、虐待リスクに対する意識を高める助けとなります。

⑤ カウンセリングやメンタルヘルスケアの導入

介護現場は精神的に負荷のかかる場であり、職員が心の健康を維持できるように、定期的なカウンセリングやメンタルヘルスケアの支援を提供することも有効です。

職員がストレスや不安を抱えている場合、専門のカウンセラーに相談できる場があると、気持ちの整理やリフレッシュが図れ、職場での対応力向上に繋がります。

虐待防止のための「チームアプローチ」の重要性

施設での介護業務は、決して一人で抱え込むものではありません。

多様な問題に対応するためには、職員同士が連携し、チームで対応する「チームアプローチ」が欠かせません。

特に、認知症の利用者さんへの対応には柔軟性が求められ、職員全員が利用者さんの状態を共有し、適切なタイミングでサポートできる体制が求められます。

例えば、対応職員を変えてみる、声かけの仕方を変えてみる、対応の仕方を変えてみる、それだけで利用者さんの状態が落ち着く場合もあります。

このようなチームアプローチを導入することで、職員一人ひとりの負担が軽減されるだけでなく、虐待行為が発生しやすい状況を未然に防ぐことができます。

虐待を防ぐ職場の雰囲気づくり

介護施設は、日常的に虐待防止の意識を根付かせ、職場全体でのモラル向上が求められます。

職場を良い雰囲気にするには、次のような3つの取り組みが効果的です。

① 日々の振り返りと意見交換

業務終了後には、簡単な振り返りや意見交換の時間を設けましょう。

振り返りを通じて、利用者さんへの対応についての改善点や気づき、他の職員への助言などを共有することができ、次の日の業務に活かすことができます。

また、職員同士の信頼関係を深める場ともなり、困ったときに助け合える雰囲気が生まれます。

② 職員のモチベーション向上を図る

職員がやりがいや達成感を感じられる職場環境も、虐待防止につながります。

たとえば、成果を評価したり、頑張りを称える仕組みを設けることで、職員のモチベーションが向上し、仕事に対する意欲が高まります。

また、キャリアアップ支援や研修の機会を提供することで、職員が成長を感じられる環境を整えることも重要です。

③ 職場環境の改善

職場環境が整っていない場合、職員は業務に集中できず、ストレスが溜まりやすくなります。

定期的に職場環境を見直し、設備の更新や作業スペースの整備を行うことで、職員が働きやすい環境を提供しましょう。

また、負担が過度に集中しないよう、業務分担や休憩時間の確保を徹底することも重要です。

おわりに

いかがだったでしょうか。

今回の事例を通して、認知症の利用者さんへの虐待行為は、職員個人だけでなく、施設全体の体制や環境によっても影響を受けることがわかります。

虐待行為を未然に防ぐためには、職員の体調管理やチームアプローチの重要性を理解し、職場全体で協力しながら対応していくことが求められます。

介護施設での虐待は職員だけの問題として捉えられがちですが、利用者さんの状況や職場環境も影響を及ぼす要因であるため、根本的な改善が必要です。

個人が理性を失う原因となる要因を明らかにし、支援体制を整えることで、虐待リスクを減少させることが可能です。

職場全体で虐待防止の意識を高め、日々の業務で実践することで、信頼できる介護施設を築き、利用者さんと職員双方が安心して過ごせる環境を目指していきましょう。

それではこれで終わります。

この研修記事が御社の運営に少しでもいかしていただければ幸いです。

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介護士の資格取得/スキルUP/転職について記事を書きています。 作業療法士/介護福祉士/ケアマネージャー資格等の保有