筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しで
もお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
読者さんへの前おきメッセージ
「身体拘束の排除の為の取り組みに関する研修」は毎年行う必要があり、研修担当者はネタが切れてしまいます。
そんな方におすすめなのが【身体拘束廃止に関する指針】の読み合わせです。
「施設にあるけど、読んだことがない」という職員がほとんどです。
しかも実は意外と、重要なことが書かれています。
【身体拘束廃止に関する指針】を読み合わせて、最後にグループワークで感想や意見を出し会うことで、一つの研修とすることができます。
この際、【身体拘束廃止に関する指針】を修正して、研修の資料としてみてはいかがでしょうか。
研修動画
本ブログ記事と同じ内容の動画です。
研修等で役立ててください。
この記事を読む価値
- この記事を少し訂正することで、御社の指針とすることができます。
- 難しい文言は省いています。
- このまま読み合わせをすることで、研修にすることもできます。
早速、見ていきましょう。
身体拘束廃止に関する理念
身体拘束は、利用者の生活の自由を制限することであり、利用者の尊厳ある生活を阻むものです。
当施設では、利用者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく職員一人一人が身体的・精神的弊害を理解し、拘束廃止に向けた意識を持ち、身体拘束等をしないケアの実施に努めます。
介護保険指定基準に規定する身体拘束禁止の条文
当施設は、当該利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き身体拘束その他の利用者の行動を制限する行為を禁止します。
緊急・やむを得ない場合の3要件
利用者個々の心身の状況を勘案し、疾病・障害を理解したうえで、身体拘束を行わない介護の提供をすることを原則とします。
しかしながら、以下の3要件のすべてを満たす状態にある場合は、必要最低限の身体拘束を行うことがあります。
① 切迫性 : 切迫性とは、利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく髙いことを指します。
② 非代替性:非代替性とは、身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないことを指します。
③ 一時性 :一時性とは、身体拘束その他の行動制限が一時的なものであることを指します。
緊急やむを得ず身体拘束を行う場合は、身体拘束廃止委員会を中心に充分に検討を行い、身体拘束による心身の損害よりも、拘束をしないリスクの方が高い場合で、切迫性・非代替性・一時性の3要件のすべてを満たした場合のみ、本人・家族への説明・同意を得て行います。
また身体拘束を行った場合は、その状況についての経過記録の整備を行い、できるだけ早期に拘束を解除するよう努めます。
日常ケアにおける留意点
常に「身体拘束ゼロ」を目指すために、日常的に以下のことを念頭に置き、ケアに入ります。
- 身体拘束廃止に向けて常に努力します。
- 身体拘束廃止に向けてあらゆる手段を講じます。
- 身体拘束を許容する考え方はしません。
- 安易に「やむを得ない」で身体拘束を行いません。
- 「やむを得ない」と拘束に準ずる行為を行っていないか、常に振り返ります。
- 利用者主体の行動・尊厳ある生活に努めます。
- 言葉や応対等で、利用者の精神的な自由を妨げないよう努めます。
- 利用者の思いを汲み取り、利用者の意向に沿ったサービスを提供し、多職種共同で個々に応じた丁寧な対応をします。
- 利用者の安全を確保する観点から、利用者の自由(身体的・精神的)を安易に妨げるような行為は行いません。
身体拘束廃止に向けた体制
当施設は、身体拘束を適正化することを目的として、身体拘束適正化委員会(以下、「委員会」という。)を設置します。
委員会の開催
委員会は、6ヶ月に 1 回以上開催し、次のことを検討、協議します。
- 身体拘束等に関する規定及びマニュアル等の見直しをする。
- 年間研修計画に沿った研修が効果的なものとなるよう企画し、評価する。
- 身体拘束等の兆候がある場合には慎重に調査し、検討及び対策を講じる。
- 身体拘束を実施さぜるを得ない場合の手続きをする。
- 身体拘束を実施した場合の解除の方法等を検討するとともに、身体拘束廃止に関する取り組み等を全職員へ指導する。
構成員
委員会は、施設長を委員長(総括責任者)、主任を副委員長とし、生活相談員、看護職員、介護職員の5名で構成します。
なお、委員長は委員会の趣旨に照らして必要と認められる職員を委員会に召集することができます。
職種ごとの役割
施設長:
- 身体拘束廃止委員会の統括管理
- 現場における諸課題の統括責任
- 施設のハード・ソフト面の改善
生活相談員:
- 身体拘束廃止に向けた職員教育
- 医療機関、家族との連絡調整
- 家族の意向に沿ったケアの確立
- チームケアの確立
- 記録の整備
看護職員:
- 医師との連携
- 施設における医療行為の範囲の整備
- 重度化する利用者の状態観察
- 記録の整備
介護職員:
- 拘束がもたらす弊害を正確に認識する
- 利用者の尊厳を理解する
- 利用者の疾病、傷害等による行動特性の理解する
- 利用者個々の心身の状態を把握し基本的ケアに努める
- 利用者とのコミュニケーションを充分にとる
身体拘束の廃止のために、各職種の専門性に基づくアプローチから、チームケアを行う
ことを基本とし、それぞれの果たすべき役割に責任をもって対応します。
やむを得ず身体拘束を行う場合の対応
本人又は他の利用者の生命又は身体を保護するための措置として、緊急やむを得ず身体
拘束を行わなければならない場合は、以下の手順に従って実施します。
1、委員会の開催
緊急やむを得ない状況になった場合、委員会を中心として、各関係部署の代表が集まり拘束
による利用者の損害や拘束をしない場合のリスクについて検討し、身体拘束を行う事を選択する前に①切迫性 ②非代替性 ③一時性の3要素全てを満たしているかどうかについて検討、確認します。
要件を検討・確認した上で、身体拘束を行うことを選択した場合は、拘束の方法、場所
時間帯、期間等について検討し、本人、家族に対する説明書を作成します。
また、廃止に向けた取り組み改善の検討会を早急に行い実施に努めます。
2、利用者本人や家族に対しての説明
身体拘束の内容・目的・理由・拘束時間又は時間帯・機関・場所・改善に向けた取り組み方
法を詳細に説明し、充分理解が得られるように努めます。
また、身体拘束の同意期限を超え、なお拘束を必要とする場合については、事前に契約者・家族等と行っている内容と方向性、利用者の状態などを確認説明し、同意を得たうえで実施します。
3、記録と再検討
法律上、身体拘束に関する記録は義務付けられており、専用の様式を用いてその様子・心身の状況・やむを得なかった理由などを記録します。
身体拘束の早期解除に向けて、拘束の必要性や方法を逐次検討します。
その記録は 2 年間保存、行政担当部局の指導監査が行われる際に提示できるようにします。
※説明書と記録は、「身体拘束に関する説明書・経過観察記録」を用います。
4、拘束の解除
3、の記録と再検討の結果、身体拘束を継続する必要性がなくなった場合は、速やかに身体
拘束を解除します。その場合には、契約者、家族に報告します。
【介護保険指定基準に規定する身体拘束禁止の対象となる具体的な行為】
- 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
- 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
- 車椅子やいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
- 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
- 徘徊しないように、車いすやベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
- 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
- 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 行動を落ち着かせるために、抗精神薬を過剰に服用させる。
- 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
身体拘束廃止及び改善に関する職員教育・研修
介護に関わる全ての職員に対して、身体拘束禁止と人権を尊重したケアの励行を図るために職員教育を行います。
- 定期的(年2回)に「虐待防止・身体拘束等防止研修」を実施する。
- 新任者、中途採用者には「虐待防止・身体拘束等防止研修」を実施する。
- その他必要な教育・研修の実施する
身体拘束廃止に関する指針の閲覧について
この指針は、当施設内掲示、及び当ホームページに掲載し、いつでも自由に閲覧することが
できます。
おわりに
いかがだったでしょうか。
この指針は、大切な文言は全て網羅されています。
この記事を少し修正するだけで、御社の【身体拘束廃止に関する指針】にすることができます。
是非、ご活用ください。
それではこれで終わります。
この研修記事が御社の運営に少しでもいかしていただければ幸いです。
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