筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
読者さんへの前おきメッセージ
「接遇マニュアル」の整備や、「接遇研修」定期研修の実施は、利用者さんの生活に入っていく訪問介護において必須です。
介護職員一人ひとりの接遇の良し悪しが事業所全体の評価にも直結します。
この記事では、訪問介護職員に必要な接遇スキルの基本中の基本をお伝えしています。
ぜひ、参考にしてみてください。
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身だしなみ
なんといってもまずは「身だしなみ」です。
特に訪問介護事業所は、私服で訪問介護を行っている所も多く見受けられます。
服装・身だしなみを整えることには、2つの意味があります。
服装と身だしなみを整える意味
- あなたを知らない人は、服装と身だしなみよって第一印象を決めます。
- あなた自身を引き締めます。
初対面の場合、あなたの身だしなみで相手は接し方を変えてきます。
だらしない人、接しやすそうな人、賢そうな人など、その人の服装・身だしなみが語っているからです。
そして相手に先入観が入ってしまうと、その後の関係性に大きく影響が及びます。
また、身だしなみを整えることは、自分自身を引き締めます。
だらしない恰好をしていると気分までだらしなくなります。
逆に「仕事は身だしなみを整えるもの」という意識で業務に入ると、気分も引き締まり、動作もキビキビし、仕事がスムーズにこなせるようになります。
つまり、服装・身だしなみがその人の考え方、行動を変えてしまいます。
【介護現場の身だしなみ6箇条】
- 清潔感
- 安全
- 他人に不快感を与えない
- 控えめ
- 上品
- 合理的で動きやすい
これらを意識し、身だしなみを確認します。
介護の仕事では、「オシャレ」はあまり必要ありません。
オシャレを意識したようなアクセサリーは、利用者さんの安全性を考えると外した方がよいです。
「どの程度のアクセサリーならよいのか」は事業所によって異なりますので、上司に確認する必要があります。
それでは、部位ごとの身だしなみや服装について記載していきます。
髪
- 明るすぎない色(黒や茶の自然な髪色)
- 前髪は眉毛にかからない程度の長さ
- フケや抜け毛、 寝ぐせに注意し、 清潔を保つ
- 長い髪はまとめて束ねる
- 髪留めや髪を結ぶゴムなどはシンプルなものを使う
ひげ
- ひげはきれいに剃る
- ひげは残す場合は整えて、清潔感を残す
化粧
- 化粧はナチュラルメイクで、派手すぎない
- 口紅、チーク、アイシャドウなどは濃い色を避ける
顔周り
- 眉毛は自然な形にする
- 鼻毛は処理する
- コンタクトレンズは無色透明なタイプを使用する
- つけまつげ、まつげエクステは華美なものをつけない
アクセサリー
- イヤリング、ブレスレット、ネックレス類をつけない
- 結婚指輪以外の指輪を着けない
- ピアスは極力小さくシンプルなもの
- 腕時計は鉄の物は避ける(つけないほうが良い、介助中は外す)
爪
- やすりで爪先を滑らかにする
- ネイルアートやつけ爪をしない(足は良い)
- 爪は短く切りそろえ、汚れなく清潔に保つ
靴
- 靴のかかとを踏まない
- 汚れや穴あきなど、清潔感のない靴は履かない
- 滑りにくい、清潔な靴を履く(スニーカー等)
- スリッパは不可
香水や柔軟剤
- 香水はついけない
- 柔軟剤はにおいの濃すぎるものは避ける
服装(上)
- 首・袖周りの汚れに注意
- 袖をまくり上げたままにしない
- ボタンをきちんと留める
- 下着が透けないように注意する
- 汚れやほつれ、しわのない清潔なものを着用
- 服を崩してきていない
服装(下)
- 汚れやほつれ、しわのない清潔なものを着用
- 裾をまくり上げたままにしない
- 入浴介助以外で、短パンなど肌が露出する服の着用はNG
- ポケットに入れるものは最小限に
- 下着が見えないように注意する
- 穴が開いていたり、汚れている靴下は履かない
その他
- 汗をかいたら、こまめに吹く
- ポケットに入れるものは最小現に(介助の邪魔になったり、危険がないかチェック)
- 入浴、歯磨きを欠かさず、体臭に配慮する
- タバコを吸吸う場合、衣服ににおいが付かないように意識する
コミュニケーションスキル
介護職員にとってコミュニケーションスキルは重要です。
コミュニケーションスキルによってサービスの質の向上や、利用者満足度の向上にもつながります。
コミュニケーションスキルは次の4つに分けることができます。
- 敬意をもって話す
- 話すときの立ち位置
- 相手に合わせた声の大きさ
- 聞き上手になる
それぞれ具体的に解説します。
敬意をもって話す
話をするときは利用者さんへの敬意を忘れてはいけません。
丁寧な言葉遣いを心がけましょう。
信頼関係ができてくると崩したコミュニケーションをとる場合もあります。
ただし「親しき中にも礼儀あり」です。
行き過ぎたコミュニケーションは慎みましょう。
タメ口、子ども扱い、ニックネー厶で呼ぶなどの行為絶対にしてはいけません。
もし利用者さん自身がよくても、それを聞いているご家族の方が不快に思います。
常に敬意を払い、丁寧な言葉で話しましょう。
【例】
食事介助の場面
×「ゆっくり食べてよ」
〇「ゆっくり召し上がってください」
浴槽に入る場面
×「熱い?」
〇「お湯加減はいかがですか?」
排便確認
×「ウンチ出た?」
〇「今日、お通じはありましたか?」
トイレを促す場面で
×「帰る前にトイレに行っとこうよ」
〇「もうすぐお帰りの時間ですが、お手洗いは済まされましたか?」
話すときの立ち位置
利用者さんと会話をする際の立ち位置は、横からか斜め前にしましょう。
真正面に立つと威圧感を与えてしまいます。
会話をするときは、相手の視野に入り、目が合ってから声をかけるよう心がけましょう。
また、話すときは視線の高さを合わせます。
座っている利用者さんに対して、上から見下ろすようなことをしてはいけません。
威圧感があり失礼な行為になります。
そして後ろから声をかけてはいけません。
高齢者の転倒の多くは振り返りざまに起きます。
後ろから声をかけられると、振り返るときに転倒する可能性があります。
相手に合わせた声の大きさ
聴覚が衰えている高齢者は多いです。
その人によって、片方の耳なのか、両方の耳なのかを事前に確認しておきます。
そして、聞き取りやすいような声で(低めの声)でゆっくりと、相手の反応を確認しながら声を掛けます。
聞き上手になる
利用者さんと信頼関係を築くには、相手に興味を持つことが重要です。
利用者さんの以前の仕事や趣味、子どもや孫の様子などを丁寧に聞いてみましょう。
ポイントは自分の話をするよりも、利用者さんの話を聞き出すことが大切です。
相槌をするなど、話したくなるようなリアクションをとるようにします。
あなたのことがもっと知りたいです。あなたの話を聞かせてください。という姿勢耳を傾けます。
「時間がなくてゆっくり話を聞いてられない…」という場合もあるかもしれません。
そんな時は、後で話を聞きに来ると約束をして、後ほどゆっくり話を聞くような方法をとりましょう。
そして、相手の話を途中で遮らず「待つ」ことも重要です。
利用者さんによっては、失語症で言葉が出にくい方や、認知機能の低下で反応が遅い方もおられます。
そんな時は会話を途中で終わらせず、「待つ」姿勢を心がけましょう。
場合によっては、質問や会話を変えることも必要です。
利用者さんの様子を観察しながら、適切な対応ができるよう努力していきましょう。
挨拶
ご自宅のドアを開け、介護に入る前に、まずは丁寧な挨拶をしましょう。
利用者さんと良好な人間関係を築くためには、好印象なあいさつが大事です。
利用者さんやご家族だけではなく、外部の方や、同僚に対しても、好印象なあいさつを心がけましょう。
【あいさつの基本】
- 明るい笑顔でゆっくり、はっきりと(広角をあげる)
- 名前を呼び、立ち止まって相手の顔をみながら
- 相手の目線と高さをそろえて
- お辞儀を添えて
- 自分から先に挨拶をする
- 相手に届く大きさで、早口にならないように
- あいさつの後にもう一言を添えると、印象アップ(「今日もよろしくお願いします」など)
笑顔
介護職は笑顔が基本です。
笑顔は利用者さんの心を和ませ、安心させる効果があります。
また、「あなたに親しみを持っています」という無言のサインを送ることができます。
笑顔でいることで、声も優しくなります。
表情と声色は連動しているからです。
同じ言葉を発していても、相手が受ける印象は全く変わります。
笑顔は、認知症の方の周辺症状を抑える効果もあります。
笑顔は簡単にすぐできる効果的なコミュニケーションのひとつです。
忙しいときなども笑顔を絶やさないよう心がけましょう。
もちろん、笑顔が苦手な方もおられます。
そんな方に笑顔の練習をしましょう。
練習方法は、鏡の前で「口角をあげて歯を見せ、少しうなずく」です。
プライバシーの配慮
訪問介護の場合ご自宅へ入るため、プライバシーへの配慮が他の介護サービスに比べより一層重要になります。
介護職員は利用者さんの個人情報や生活空間を守ることが大切で、必要以上にプライベートな情報に踏み込まないように注意します。
プライバシーの侵害は、次の4項目に分けることができます。
- 私生活への侵入
- 個人情報などの公開
- 誤った印象を与えるような事実の公表
- 氏名・肖像などの無断使用
もしプライバシーの侵害を続けていると、利用者さんとの信頼関係が崩れるだけではなく、あなたや会社が訴えられてしまう可能性もあります。
そのため、サービスを提供する中でプライバシーを侵害しないよう、配慮しながらかかわる必要があります。
詳しくはコチラを参考にしてください。
時間厳守
「前の訪問先が長引いてしまって遅れてしまいそう…」という場面は度々あります。
でも遅れる場合は必ず連絡を入れ、理由を説明しましょう。
利用者さんやそのご家族は、スケジュールに基づいて日々の生活を送っています。
訪問時間がおくれると、利用者さんの生活リズムを乱す可能性があり、場合によっては体調にも影響を与えることがあります。
また、ご自宅に訪問するので利用者さんやご家族との信頼関係は重要です。
時間にルーズで、その連絡や説明もないとなると、信頼関係は築けません。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は、訪問介護の接遇マニュアルをご紹介しました。
ベテラン職員でも、長い期間【接遇】について学んでいないと、知らないうちにいい加減になってしまいます。
是非、定期的に研修を実施してみてください。
新人の介護職員の方には、接遇だけではなく、他の知識も伝えなければいけません。
新人教育に役立つ記事も書いていますので、興味がある方はこちらも参考にしてください。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この研修資料が、御社の運営にお役立ていただければ幸いです。
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