筋肉の老化の原因と予防に効果的なストレッチ法【介護予防及び要介護度進行予防に関する研修】
筆者
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
読者さんへの前おきメッセージ
介護現場では、利用者さんから毎日のように体の不調の訴えを聞きます。
「腰が痛い」「肩が痛い」「動かしずらい」「しんどくて動きたくない」などを耳にしませんか?
その原因の一つに筋肉の老化が考えられます。
高齢者と日々向きあうことを仕事としている僕たちは、加齢が筋肉に与える影響やその解決方法を知っている必要があります。
ちょっとしたアドバイスにより、高齢者の生活が変化し、快適に生活を送れる可能性もあります。
研修動画
本ブログ記事と同じ内容の動画です。
動画内には、実際にストレッチをしている場面が出てきます。
ぜひ、研修等で役立ててください。
この記事を読む価値
- 【筋肉の老化】についての知識を深めることができます。
- 【筋肉の老化にはストレッチが重要な理由】がわかります。
- 高齢者に効果的なストレッチの方法をお伝えします。
早速、見ていきましょう。
筋肉の老化
減少するホルモンは2種類あります。
成長ホルモンやテストステロンは、筋肉のもとになるタンパク質合成を促したり、筋繊維の崩壊をおさえたり、回復させたりする働きがあります。
ホルモン分泌が減少し筋肉が老化すると【筋肉がやせる(筋委縮)】、【筋肉が硬くなる】という状態になります。
なので筋肉を使わず放っておくと、年齢とともに徐々に筋肉の老化が進んでいきます。
筋肉は使わないと衰える一方
筋肉は使わなければ衰え、筋肉を構成する筋繊維も短く細くなっていきます。
骨折などでギプス固定をした人は経験があるかもしれませんが、長期間動かさなければ筋肉はやせて、関節はほとんど動かなくなってしまいます。
程度の差はありますが、運動不足などによって動かさない筋肉は同じように硬くなっていきます。
硬くなった筋肉は動かしづらいのはもちろんのこと、血行も悪くなり疲労や肩こり、腰痛などの原因にもなってしまいます。
また、ふらつき易い、ふらついた時にバランスがとれない、など良くないことが多くなります。
筋肉を老化させない方法
誰しも年齢を重ねると、筋肉は縮んで凝り固まり、弾力を失ってしまいます。
でも、そう感じさせない人もおられます。
同じ80歳でも、テクテク歩いて買い物に行く人もいれば、要介護状態でほぼ寝たきりの方もおられます。
何が違うかというと、普段の運動量が異なります。
日々トレーニングをしている方、もしくは自宅周辺に坂が多く、坂や階段の昇降を繰り返されている方は元気な方が多いです。
しかし、今さらトレーニングをしたり生活環境を変えるのは難かと思います。
変わりに筋肉の老化予防に効果的なのが、今からご紹介するストレッチです!
ストレッチをすることによって筋肉の柔軟性を取り戻し、筋肉の老化を防ぐことができます。
柔軟性にはストレッチ
まずは『ストレッチの定義』からお伝えします。
何事も、最初は定義を確認することが大事です。
「スポーツや医療の分野においてストレッチとは、 体のある筋肉を良好な状態にする目的でその筋肉を引っ張って伸ばすことをいう。
筋肉の柔軟性を高め関節可動域を広げるほか、呼吸を整えたり、精神的な緊張を解いたりするという心身のコンディション作りにもつながるなど様々な効果がある。」
ストレッチにより筋肉の柔軟性を改善すると、【筋肉の老化】への予防以外にも以下のような効果が期待できます。
- 腰痛、膝、背中の痛みの改善
- 眠りの質が高くなる
- 血圧が調整される
- リラックスした日々を送ることができる
- 身体を温める
それぞれ簡単に解説していきます。
腰痛、膝、背中の痛みの改善
ストレッチは痛みの改善にも効果的です。
【腰痛、膝、背中の痛み】といった症状は筋肉が硬くなっているために起こることが多々あります。
筋肉は全身繋がっているものであり、どこかに異変や筋肉の硬さがでることでバランスが崩れてしまい、痛みが発症します。
眠りの質が高くなる
年をとると眠れなくなる。と悩んでおられる方は多いと思います。
特に寝る前のストレッチは呼吸を落ち着かせ、自律神経を調整し眠りを誘います。
ストレッチは気持ちを落ち着かせ、身体をリラックスした状態に働く作用があります。
心拍数も低下させ、眠りの状態に入ることで睡眠の質が向上するので快適な生活を送ることができます。
血圧が調整される
ストレッチは血圧の低下にも効果があることがわかっています。
高血圧は今は国民の3人に1人と言われています。
特にふくらはぎや足首といった血液が溜まりやすい箇所のストレッチを行うことで血圧が下がることがありますよ。
リラックスした日々を送ることができる
ストレッチにより自律神経が整うことで、緊張をほどいたり、呼吸を落ち着かせることができます。
また循環器では心拍出量を減らし、身体にエネルギーを必要としない状態にします。すると自然にリラックス効果が得られるということです。
自律神経が活発な状態である場合には常に緊張状態が続き、ストレスも溜まる一方です。これらのバランスを整えるのがストレッチによるものと考えても良いでしょう。
身体を温める
ストレッチをすることで基礎代謝が向上します。
そもそもの基礎代謝が低下する要因としては筋肉が硬くなっていることが挙げられます。
筋肉が硬いと血管を圧迫し血液循環不良が発生します。
それをストレッチをすることで取り除いてあげることができ、血液循環が良好になり全身に酸素、二酸化炭素、栄養が運ばれることで基礎代謝が向上します。
基礎代謝の向上で冷えやむくみは解消します。
ストレッチの種類
ストレッチは大きく分けて4種類あります。
- スタティックストレッチ
- バリスティックストレッチ
- ダイナミックストレッチ
- PNFストレッチ
高齢者にお勧めなのは【スタティックストレッチ】です。
それぞれ具体的にお伝えしていきます。
1、スタティックストレッチ
よくストレッチと聞いて思い浮かぶストレッチのやり方です。
そして4種類のストレッチの中で唯一、僕が高齢者におススメするストレッチ方法です。
筋肉を伸ばした状態で止めて、反動をつけずに30~60秒保持します。
筋肉は伸ばしすぎると痛みで、逆に筋肉を縮めようとすることがあるので、伸ばしすぎに注意です。
スタティックストレッチは筋肉へかかる負担が少ないため、安全に伸張運動を行いながら、柔軟性を高めることができます。
また、広いスペースを必要としないため、とても便利で簡単に行うことができます。
2、バリスティックストレッチ
反動をつけて筋肉を伸ばすストレッチです。
「グッ、グッ、グッ」と反動をつけながら身体を伸ばしていきます。
しかし反動により筋紡錘と呼ばれる筋肉のセンサーが刺激されて、場合によっては筋肉の緊張が上がる可能性があります。
若者がスポーツの前に行うのは良いですが、高齢者にはあまりお勧めできません。
3、ダイナミックストレッチ
よく肩こりの予防改善運動で、【肩を中心に肘で大きく円を描くように回す運動】を見たことがありませんか?
またはサッカー選手が歩きながら股関節を大きく曲げたり、野球選手が走りながら肩や足を大きく動かしたりするのもダイナミックストレッチです。
ダイナミックストレッチとはあのような運動で、関節の動きを円滑にするために行うストレッチです。
指導者がいて、ゆっくりとするのは良い効果があるかと思いますが、高齢者が一人でするにはあまりお勧めできません。
ケガの原因にもなりますし、間違った運動にもなりかねません。
4、PNFストレッチ
固有受容器神経筋促通法(Proprioceptive Neuro muscular Facilitation:PNF)を応用して行うストレッチです。
難しい名前であまり馴染みがないかもしれません。
PNFストレッチはスタティックストレッチと比較して、より効果があるといった報告が多くありますが専門的な知識を持った方にやってもらう必要があります。
トレーナーなどに個別でやってもらう必要があるので、どうしても試してみたい方は整体や接骨院などでPNFストレッチを実施している施設を探してみましょう。
スタティックストレッチのポイント
高齢者におすすめな【スタティックストレッチ】のポイントをお伝えします。
ポイントは5つです。
- 程度
- 伸長時間とセット数
- 痛みや炎症の有無
- 筋肉を意識する
- 呼吸を止めない
それぞれ解説していきます。
1、程度
筋トレに比べてストレッチは体に優しいと思っている人が多いようですが、70歳以上の方では、むしろストレッチによる怪我が多いのです。
というのも若い時に比べて筋肉や靭帯の柔軟性が低下していますから、少しの負荷でも切れやすくなってしまうのです。
そこでケガのない、効果的に柔軟性を向上するには「止め」を意識したスタティックストレッチが安全でベストです。
伸長の程度も痛すぎることなく、「気持ちが良いな」と思える程度で十分です。
無理なく継続していきましょう。
2、伸長時間とセット数
筋肉は、年齢とともにその柔軟性を失っていきます。20代と60代では、日頃の運動量にもよりますが、60代の方がはるかに筋肉の柔軟性は低下しています。
そこで、年齢が上がれば上がるほど、ストレッチの時間とセット数を増やしていくことが重要です。
20代では30秒3セット程度が基本となりますが、60代では40秒~50秒を3~4セット行っても良いかもしれません。
3、痛みや炎症の有無
痛みや炎症の起きている筋肉は、防御性収縮が起きている可能性が高く、ただでさえ筋緊張が高い状態にあります。
そのような筋肉に対してスタティックストレッチを行う際には、痛みのない程度のストレッチから始めて、徐々にその伸長する強さを強めていく必要があります。
特に、少し負荷の強い筋トレの後には、筋肉内に微細損傷が起きていることもあり、過緊張状態にあることも多々あります。
よって、筋トレ後のストレッチでは特に注意が必要です。
4、筋肉を意識する
スタティックストレッチは伸ばして静止するだけですが、ただ伸ばすだけでは効果的なやり方だとは言えません。
正しい方法を身に付けて効果的にストレッチしてみましょう。
まずは、上記で説明したように「伸びて気持ち良い」程度で止めその姿勢を保持します。
そして、伸ばしている筋肉を意識します。
我流でなんとなくやっていると、伸ばしているつもりになっていることが少なくありません。
これでは、同じ時間を使ってストレッチしたとしても効果半減です。
伸ばす筋肉を意識するだけで、正しい姿勢も身に付きます。伸ばしている筋肉を意識してみましょう。
5、呼吸を止めない
ストレッチの最中は、鼻と口を使って細く長くリラックスした状態で呼吸を続けてください。
呼吸を止めると体が緊張状態になり、筋肉が硬くなって十分な弛緩効果が得られなくなってしまいます。
息を吐きながら気持ちいいところギリギリまで伸ばし、少しずつ可動域を広げていきましょう。
筋肉を柔らかくするだけではなく、呼吸法なども取りいれることで精神的にもリラックスできます。
おわりに
いかがだったでしょうか。
筋肉の老化は誰もが生じます。
そしてそれが身体に与える影響は大きいです。
適切なストレッチによって、できる限り老化を防ぎ、健康寿命を延ばすよう手助けしていきましょう。
コチラの動画の最後には、ストレッチの様子を学べますので、是非参考にしてみてください。【介護予防 及び 要介護度進行予防に関する研修】
そして「もっと【介護予防及び要介護度進行予防に関する研修】の資料を見たい」という方は、コチラの記事をごらんください。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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