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虐待防止

【介護施設】高齢者虐待防止に資する研修【不適切なケアの予防】

とも
とも
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。介護施設の法定研修である【高齢者虐待防止に資する研修】を記事にしました。

筆者(とも)

記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。

日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。

読者さんへの前おきメッセージ

利用者さん(入居者さん)に対する虐待が生じてしまう施設は、必ず職員の不適切なケアが行われています。

不適切なケアの積み重ねが、虐待へ発展してしまう訳です。

よって「虐待予防」は、まず「不適切なケアの予防」から取り組む必要があります。

この研修記事では、「不適切なケアとは何か」「どうすれば防げるのか」についてお伝えしていきます。

この記事を読む価値

  • 「高齢者虐待とは、身体拘束とは」を簡単に振り返ります
  • 「不適切なケアとは何か、その予防法」を理解できます
  • グループワークをすると、1時間程度の研修にすることができます

動画視聴のご案内

本ブログ記事と同じ内容の動画です。

動画で見たい方は、画像をタップしてください。

介護施設 高齢者虐待防止研修 不適切なケアの予防

それではさっそく見ていきましょう。

高齢者虐待とは、身体拘束とは

まずは「高齢者虐待とは何か」、「身体拘束とは何か」について復習しておきましょう。

高齢者虐待とは

高齢者虐待とは、高齢者が介護施設・ご家族などから、身体的・経済的・心理的に権利を侵害されることです。

いわゆる高齢者に対する深刻な人権侵害のことです。

高齢者虐待には、次の5つの種類があります。

①身体的虐待

高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。

②介護・世話の 放棄放任

高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置その他の高齢者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。

心理的虐待

高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

性的虐待

高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者にわいせつな行為をさせること。

⑤経済的虐待

高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。

※参照:厚労省【高齢者虐待防止の基本】

この5項目に該当する行為は、【高齢者虐待防止法】により禁止されています。

法律で禁止されているため、それを破ると勿論、刑罰が科されます。

どのような刑罰があるのか気になる方は、こちらの記事を参考にしてください。このまま使える!【介護施設】高齢者虐待の防止に資する研修

身体拘束とは

身体拘束とは、本人の意思に反し、次のような方法で行動を制限することを言い、介護施設では原則禁止されています。

  • 徘徊しないように、車イスやイス、ベッドに体幹 や四肢をひもなどで縛る
  • 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひもなどで縛る
  • 自分で下りられないように、ベッドを柵(サイドレー ル)で囲む
  • 点滴、経管栄養などのチューブを抜かないように四肢をひもなどで縛る
  • または手指の機能を制限するミトン型の手袋などを着ける
  • 車イスからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車イステーブルを付ける
  • 脱衣やおむつ外しを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる
  • 自分の意思で開けることのできない居室などに隔離する
  • 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる
  • 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひもなどで縛る

しかし身体拘束は、「緊急やむを得ず」身体拘束を行うことが認められる場合のみ、認められます。

次に「緊急やむをえない場合」とは何か、どのような対応をするのか、をみていきます。

緊急やむを得ない場合の対応

身体拘束は「生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束を行ってはならない」と定められており、緊急やむを得ない場合も、次の3つの要件をすべて満たす必要あります。

【3つの要件】

  1. 切迫性:本人または他利用者の生命・身体が危険にさらさせれる可能性が著しく高いこと
  2. 非代替性:身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護がないこと
  3. 一時性:身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること

仮にこの3つの要件を満たす場合でも、以下の①〜④の手続きを進めなければなりません。

① 施設全体での判断

「緊急やむを得ない場合」に該当するかどうかの判断は、個人や数名では行わず、施設全体としての判断が行われるように、あらかじめルールや手続きを決めておく必要があります。

② 説明と理解

利用者さん本人やご家族に対して、身体拘束の内容、目的、理由、拘束時間、時間帯、期間などをできる限り詳細に説明し、理解を得ることが必要です。

その際の手続きや説明者についても、事前に明文化しておく必要があります。

③ 常に観察・再検討する

やむを得ず身体拘束を行う場合は、常に観察・再検討し、要件に該当しなくなった場合にはただちに解除しな ければなりません。

④ 記録の義務化

やむを得ず身体拘束などを行う場合には、その対応および時間、その際の利用者さんの心身状況、緊急やむを得なかった理由を記録しなければなりません。

身体拘束についての研修資料を探している方は、こちらの記事を参考にしてください。【介護施設】身体拘束の排除の為の取り組みに関する研修

不適切なケアとは

明らかな虐待とは言い切れないけれど、決して正しい方法でもない、「倫理的にグレーゾーン」であるケアのことです。

ここまで挙げた高齢者虐待・身体拘束に当たらない行為であっても、不適切なケアはいずれ虐待などにつながると考えられます。

では、次によくある不適切なケアをあげてみます。

  • あだ名や〇〇ちゃん呼び、呼び捨てにする
  • 声がけをせず、いきなり車椅子をおす
  • 「~したらダメ!」などと命令口調で行動を抑制する
  • 利用者さんの許可無く、私物を触ったりする
  • 衣服の着脱に「時間がかかりすぎる」という理由だけで、全介助を行う
  • 利用者さんやご家族の言動をあざ笑ったり、悪口を言ったりする
  • 「トイレに行きたい」と頻繁に言う利用者さんに「今言ったところだよ!」と言って対応しない
  • 利用者さんの呼びかけに対して「ちょっと待って」と長時間放置する
  • 子ども扱いしたりする
  • 食事や入浴介助の無理強いなど、利用者さんに嫌悪感を抱かせるような援助をする

よくあるのが「利用者さんを座らせておく」という行為です。

どこの施設も「リスク管理」や「人手不足」に悩んでいるかも知れません。

しかし、「一人で勝手に動かないで」「座っていて」などの言葉は「行動を制限する」ことになり、利用者さんの「尊厳」を奪うことにつながります。

施設全体で「どうすればこのような声かけをせずに済むのか」を考えて対処することが、虐待防止への取り組みの一環にもなります。

不適切なケアを減らしていく取り組み

2024年度より「虐待防止検討委員会の設置」が、どの介護サービスにも義務付けられています。

「虐待防止検討委員会」では、不適切なケアに対して、次のようなことを検討してみてはいかがでしょうか。

理念や運営方針の共有

まずは事業所が掲げる理念や運営方針を明確に言語化し、それを職員全体で共有することが大切です。

また理念や方針を実現していくために、実際とるべき行動や提供する介護サービスについて具体的な内容にまで落とし込み、指針を示すことが重要です。
 
さらに職種による責任や役割を明確にすることも必要となります。

責任の所在や指示系統を明確にし、組織図を作成し開示してもよいでしょう。
 
そして、第三者の目を入れ、開かれた組織にすることで虐待や不適切なケアの横行を防ぎます。

適正人数の把握

不適切なケアが発生してしまう要因として、「人手不足」があげられます。

人手不足で、職員一人当たりの業務負荷が大きいと、どうしても職員の都合を優先してしまい不適切なケアが発生してしまうというケースもあります。

まず把握しておくべきなのが、適正な職員数です。

介護サービスに応じて、利用者数に対する適正な職員数は決められています。

  • その人数を満たしているのか(またはギリギリが続いていないか)
  • サービス内容は、その人数で実施可能なのか

リーダーや管理職は、この2点をしっかりと認識しておきましょう。

職員への教育

不適切なケアは、基本的な知識や技術が不足していることによって発生する可能性もあります。

例えば「職業倫理または法令の知識」や「利用者さんの尊厳」など知識です。

したがって職員全員が同じ倫理観を持てるよう、定期的に研修等を実施する必要があります。

研修では、一般的な倫理観や法律に関する教育を行うとともに、実際にいま提供しているケアの内容や方法がそれに基づいたものであるかをチェックしていきましょう。

介護スタッフのための接遇研修

「不適切なケア」を撲滅するためにも、定期的な接遇研修は大変重要です。

接遇研修は、2つのポイントに絞って実施してみてはいかがでしょうか。

  • 「丁寧な説明」と「同意」
  • 専門用語は使わない

具体的には、次のようになります。

「丁寧な説明」と「同意」

利用者さんのに対しては、丁寧な言葉使いで話しかけることが基本です。

利用者さんの活動を促す声かけとして、よく「〇〇してください」などと言う場面が見られますが、自立支援で考えれば、利用者さんの意思を引き出し、自己決定を促すような声かけをすることが大切です。

例えば、「〇〇されますか?」「〇〇してくださいますか?」などと伝えると、丁寧に聞こえるだけではなく、利用者さんの意思を尊重していることが伝わり、よりよいケアにつながります。

【悪い例】

〇〇さん、洗濯物をたたんでください

こちらにお名前を書いてください

お風呂に入りますよ

【良い例】

〇〇さん、すみませんが、 洗濯物をたたむのを手伝っていただけますか?

こちらにお名前を書いていただけますか?

お風呂に入りませんか?

専門用語は使わない

利用者さん・ご家族にサービス内容などについて説明するときは、専門用語ではなく、利用者さん・ご家族に伝わりやすい言葉を使うように心掛けましょう。

【悪い例】

嚥下機能の向上を目的とした、機能訓練を行いましょう

バイタルは安定しているようです

肩の可動域を改善しましょう

【良い例】

食べ物を飲み込みやすくする ための練習をしましょう

血圧は安定しているようです

肩を動かしやすくしましょう

このようなコミュニケーションスキルは基本中の基本です。

しかし経験が豊富になるにつれて、いい加減になってくるのも事実です。

まずは新人のときにしっかりと研修を実施し、そして年に1度は接遇研修を実施するのがベストではないでしょうか。

新人研修としてどのようなことを実施すべきか知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。【介護施設】新人教育マニュアル(研修にも使える内容)

グループワーク

この記事を研修の資料とするなら、次の3つの題でグループワークをしてみてはいかがでしょうか。

  1. この施設では、どのようなケアが不適切なケアに該当すると思いますか?
  2. 不適切なケアが生じないよう、どのような取り組みができますか?(施設として、個人として)
  3. この研修を受けた感想、意見等

まずは個人で10分程度考え、次にグループごとに意見を出し合い、最後に発表することで、30~40分のワークにすることができます。

おわりに

いかがだったでしょうか。

今回学んだ内容は、介護の基本部分になります。

この基本がおろそかになっては、いくら良いプログラムやサービスを用意しても、利用者満足度は上がりません。

まずはこの基本の部分を全職員と共有し、土台を作っていきましょう。

それではこれで終わります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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