こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。先日、以下のようなツイートをしました。
手持ちぶさたな利用者さんへの提供。脳トレ、将棋、張り絵作り…などいろいろ工夫されている。そこでお勧めは『役割プログラム』の導入。『役割プログラム』とは高齢者に役割を持っていただき、職員側が「ありがとうございます」と感謝を言える仕掛けづくりのこと。利用者さんはイキイキされます。
— とも@介護士ブログを運営 (@tomoaki_0324) December 23, 2022
手持ちぶさたな利用者さんへの提供。
脳トレ、将棋、張り絵作り…などいろいろ工夫されている。
そこでお勧めは『役割プログラム』の導入。
『役割プログラム』とは高齢者に役割を持っていただき、職員側が「ありがとうございます」と感謝を言える仕掛けづくりのこと。
利用者さんはイキイキされます。
僕の働く施設では「役割プログラム」が定着しています。利用者の皆さんは役割をこなしながらイキイキと過ごされています。
【介護施設】高齢者の社会参加を促すには『役割プログラム』を導入すべき理由
筆者
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職にとって必要な情報をシェアしていきたいと思います。
この記事を読む価値
- 高齢者とって役割プログラムがどれほど重要か、がわかります。
- 具体的にどのようなことが提供できるかを知れます。
- 明日から使える内容です。
早速、見ていきましょう。
役割プログラムとは
既にプログラムとして行っている介護施設では、以下のような役割があるかもしれません。
- テーブル拭き
- 茶わん吹き
- お味噌汁つくり
- 洗濯物たたみ
- 洗濯物干し
実はこのプログラムは高齢者の"社会参加"にとって非常に重要です。
こんな記事を書く僕も、実は病院で勤務していた時は、"役割"や"役割プログラム"について何も知りもしませんでした。
病院では「社会参加」はそれほど考えなくても済むからです。
しかしデイサービスで働きだして研修や施設見学に行き、このプログラムの重要性を強く感じるようになりました。
すでに役割プログラムを取り入れている施設の方も、もう一度、意味を再確認していただき、普段の業務に活かしていただけると嬉しいです。
"人の役割"について
例えば、成人期(18歳~40歳)はイメージしやすいですよね。
世の中のために働き、家族を養い、子供を育てる役割があります。
乳幼児期にもちゃんとした役割があります。
それは両親や祖父母に安らぎや癒しを与える役割です。
それぞれの発達段階に役割があります。
壮年期(40歳~65歳)になると孫の面倒を見る役割があります。
他にも、
- 家族のまとめ役
- 家族の相談相手
- 家族の支え手
などです。
しかし75歳以上、または80代はどうでしょう…
少しづつ役割が減っていきます。
歳をとればとるほど役割が少なくなり、最後にはなくなってしまうことがイメージできます。
役割とは「社会生活においてその人の地位や職務に応じて期待され、あるいは遂行している働きや役目」とあります。
高齢者は、役割がなくなると期待されることもなく、役目もなくなります。
その状態が長くなるとどうなるでしょうか。
次第に気力がなくなり自分の意志で行動すること(主体性)が減り、他者へ依存するようになります。
「早くお迎えに来てほしい」なんて言っている高齢者をみかけたことがないでしょうか。
人はそれぞれ生きる上で役割は必要です。
高齢者が自己肯定感をもち、イキイキと過ごしていくには、誰かの役に立って「ありがとう」と言ってもらえることは重要です。
介護業界では「その人の居場所を作る」というような言い方もしますが、高齢者施設ではこの『役割』を促す『役割プログラム』が必要です。
「社会参加」と役割プログラム
高齢者に対するリハビリは大きく分けて以下のような3つのアプローチ方法があります。
- 心身機能へのアプローチ
- 活動(動作)へのアプローチ
- 参加(社会参加)へのアプローチ
以下、具体的に解説します。
『心身機能へのアプローチ』とは:
筋力、関節の動き、持久力、感覚、認知機能(記憶・注意力・遂行機能など)、心理面へのアプローチです。
『活動(動作)へのアプローチ』とは:
例えば、床のものを拾うトレーニング、自宅のお風呂をまたぐ動作、家計簿をつけるトレーニング、洗濯機の手順書を作成し実施するトレーニングなどへのアプローチです。
『参加(社会参加)へのアプローチ』とは:
例えば、地域でのごみ拾い、資源回収の運搬、地域行事への参加などへのアプローチです。
この3つの中で一番重要なのは、最後の参加(社会参加)へのアプローチです。
他の2つの能力をいくら向上させたとしても、高齢者が社会参加をせずイキイキして過ごしていなければ意味がないのではないかという考えのもとです。
しかし「社会参加」といっても85歳、90歳の高齢者が果たして地域でのごみ拾いや資源回収の運搬などできるでしょうか…
もしかしたらできる方もおられるかもしれませんが、多くの方は不可能だと思います。
そしてここで出てくるのが役割プロラムです。もちろん役割プログラムは社会参加に位置づけられます。
地域でのごみ拾いができない方でも
- 衣服の補修
- アイロンがけ
- 靴の手入れ
などなら、やり方次第でできるかもしれません。
そして、介護施設でこのような練習をし、家で役割を持つことでイキイキと生活をすることができます。
どうでしょう?役割プログラムの重要性を理解していただけたのではないでしょうか。
「高齢者の社会参加」について厚労省の資料をのせておきます。
興味のある方はこちらをご覧ください。
役割プログラムを実施するうえで必要なこと
役割プログラムは「何でもいいからやってもらう」「誰でもいいからやってもらう」のではありません。
例えば、
- 自宅での目標が「キッチンで軽食を作れる」という方に、キッチンに立ち洗い物をしていただく
- 重度で喋ることが難しい方に、広告紙でごみ箱を作るなど簡単な作業をしていただく
といった感じです。
また生活歴と活躍の場を結びつけることも必要です。
今は病気や障害のために自分で行うことができなくなった方も、趣味や特技を活かせる関わり方を創意工夫して、みつけます。
例えばアドバイザー的な関わりです。
昔の得意料理や郷土料理《徳島県出身の認知症の女性と郷土料理そば米汁をつくる》を作ってみる場などできるかもしれません。
高齢者には認知症の方も多く、しっかりとスタッフと協議し合い役割プログラムを進めていく必要があります。
役割プログラムの具体例
僕はデイサービスで働いていることが長かったので、デイサービスでできることを例にあげていきます。
- ランチョンマット、お箸、箸置き、スプーンの設置
- 洗い物
- お昼前とおやつ時の手指消毒
- 洗濯物干し
- おやつの準備
- テーブル拭き
- 茶わん吹き
- お味噌汁つくり
- 洗濯物たたみ
- 洗濯物干し
- 食事表の代筆
- 植木に水をやる係
- 鉛筆けずり
- 足台の制作
- お砂味などの制作
- チラシでゴミ箱を作る
自宅で役割を持つことを目標にするなら、以下のような目標から新たに役割プログラムを作成できるかもしれません。
- 住居の内部を手入れ(衣服の補修、アイロンがけ、靴)をする
- 住居の外部を手入れ(庭や植物)をする
- ペットを世話する
- 家計や財産の管理をする
- 家族や親族を介護する
- 育児、または子供を預かる
- 訪問者や電話への対応をする
- ご近所付き合いをする
- 親族関係の調整役をする
- 家族や親族の相談相手をする
- 神棚や仏壇を管理する
- 墓参りをする、または法要の準備をする
おわりに
いかがだったでしょうか。
最後に、厚労省の資料に介護保険施設に向けてこのような文があります。
『高齢者を「単なるサービスの客体ではなく、役割を持つ人間」と定め、彼らがお世話を受ける受動的な存在に収まらず、役割を持ち、自らの様々な能力や残存機能を発揮し、その存在意義を見出すのを手助けすることが施設の役割であるとし、この精神によってサービスを遂行することが介護保険施設のあるべき姿である。』
高齢者に楽しんでもらう、満足してもらうという視点から、役割感を持てる主体性を導き出す関り、または個人の目標を尊重した支援という視点が重要になります。
高齢者が主体的に(自分から)行動できる環境を提供することによって、自信が回復する、自己効力感が上がる、生きる活力が生まれる、人や地域社会とのつながりを取り戻す、などの効果が期待できます。
その結果、利用者さんが様々な意味での自立を取り戻し、そして生活の質の向上(イキイキと暮らすことができる)などが達成できると職員もやりがいが出ますよね。
それではこれで終わります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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