筆者(とも)
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。
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「マニュアル作成にかける時間が無い」、「研修資料を作成する時間が無い」という方に向けての内容です。
内容は簡単で、難しい表現は省いています。
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「感染」と「感染症」について
「感染」とは、何らかの微生物(病原体)が体内(臓器や組織)に侵入した状態をいいます。
侵入した微生物全てが、病気として発病するわけではありません。
体の抵抗力によってその大部分は、一時的に体内から追い出されるか、あるいは病気を起こさず定着(保菌状態)します。
この保菌状態では、その微生物は何の害も及ぼしません。
「感染症」とは、感染が原因で何らかの症状(せき、発熱、下痢など)を起こしている状態を指します。
感染症の症状が出るのは、病原菌が人の抵抗力よりも強くなった場合です。
よって利用者さんが感染疾患を持っていたとしても、介護職員が皆感染するわけではありませんし、予防することも可能です。
もちろん逆もあります。
保菌状態の職員が利用者さんに感染させてしまい、利用者さんが感染症を発症してしまうケースもあります。
よって介護施設で働く職員は、感染症の知識と、感染対策の知識を身につけることが重要です。
感染症対策の基本
介護施設は、さまざまな人が出入りします。
よって、どこからでも感染症が入ってくる恐れがあります。
そして、高齢者は免疫力が低下している方が多いので、感染すると重症化しやすいことを覚えておきましょう。
事業所内で感染症を発生させないよう「感染症対策の基本」は常に心がけておく必要があります。
「感染症対策の基本」は次のようになります。
- こまめな手洗い
- 消毒
- うがい
- 手袋
- マスク
- エプロン(ガウン)
では、それぞれ具体的にお伝えしていきます。
① こまめな手洗い
介護施設で働く職員にとって、手洗いは基本中の基本です。
「手洗い」に関しての詳細は後述します。
② 消毒
まずおさえておくべきなのは、介護施設等で使用する消毒液は二種類あります。
- アルコール消毒液(60%台のエタノール)
- 次亜塩素酸ナトリウム消毒液
前者は、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスに対して、後者はノロウイルス等に対して使用します。
用途が変わりますので、その点を理解して使用するようにしましょう。
次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方:
- 準備する薬剤:5%の次亜塩素酸ナトリウム(例:家庭用塩素系漂白剤キッチンハイター、キッチンブリーチなど)
- 水500mlあたり漂白剤のキャップ2杯(10ml)を混ぜる(濃度1000ppmに相当)
消毒は1日1回以上を目安として、主に共同で使用するトイレ(手すり・レバー・ドアノブ)や浴室、洗面など実施します。
他にも、イスの背もたれ、ひじ置き、スイッチ、リモコン、調理器具なども消毒しましょう。
消毒をする際に注意するべき点としては、
①消毒するときは十分な換気を行う。
②消毒作業は上から下に行う。
③拭取りは同一方向に拭取り、後戻りしない。
などがあります。
③ うがい
口は病原体が入る入口です。
うがいは食事による食べかすなどの除去や口の中を洗浄する効果を持ち、病原体が口の中に定着することを防ぎ、確実にばい菌を減らす効果があります。
うがいが必要な時:
- 勤務終了時に手洗いとともにうがいの実施
- 咳のひどい人、気管切開をしていて痰の多い人のケアをした時に、手洗いとともにうがいの実施
- MRSAの方のケア後に手洗いとともにうがいの実施
- 自分に感冒(かぜ)症状のある時にはうがいを励行し、マスクをする
かぜやインフルエンザウイルスの流行期にはうがいを励行し、職員がウイルスを施設や利用者宅に持ち込まないようにしましょう。
うがいの方法:
- 約60mlの水を用意し、うがいを3回に分けて使用
- 1回目:口に含んで少し強めにうがいをする
- 2、3回目:のどの奥まで届くように上を向いて15秒間うがいをする
うがい薬にはイソジンガーグル液などがありますが、使い過ぎはかえって口の中の正常な菌まで殺してしまいますので、1日数回にとどめた方が良いです。
液は15~30倍に薄めて使います。
④ 手袋
感染予防のポイントは「感染の可能性のあるものには直接素手で触れない」ことです。
感染の可能性のあるものとは、血液や体液(唾液・鼻汁・痰など)、傷からの分泌物などです。
そして、感染の可能性があるものに触れる場合は、ディスポーサブルの手袋を使用します。
引用画像:ミドリ安全
自分の手に手荒れや傷がある場合も、感染から身を守るために手袋を着用しましょう。
また、手袋使用後も必ず手洗いをしましょう。
着用時の注意事項:
- 一度使った手袋は必ず捨てる。次の人には使わない!
- 手袋をしたままでまわりの物を触らない
- 長時間使用して汗をかいたり、清拭時のお湯で手袋の中が湿ってきたら交換する
- はずすときは、外側の汚れた方を内側にひっくり返す
⑤ マスク
マスクは、ディスポーザブル紙マスクを使用しましょう。
引用画像:SAN-WEB
医療・介護現場でマスク着用は必須です。
マスクはウイルス等の飛沫や結核などの飛沫核が、鼻腔・口腔から侵入するのを防ぎます。
またケアする側に咳が出る場合は、相手に移さないためにマスク着用が必要です。
マスク着用は新型コロナウイルス感染予防以外にも、
- 肺結核
- 風邪
- インフルエンザ
などの感染予防にもなります。
咳や痰の激しい利用者さんに接する場合は、特に気を付けましょう。
着用時の注意事項:
- 結核の場合は、結核マスク(N95)が適している
- マスク着用時は口のみではなく、口と鼻を覆って使用しないと効果がない
- 着用したマスクを触らないようにする
⑥ エプロン(ガウン)
エプロン(ガウン)の着用は、感染の可能性のあるもの(血液や体液、傷口からの分泌液)に、直接介護者の体が触れるのを防ぐことを目的とします。
また、介護者の衣服に付着した感染源を持ち歩かないためにもエプロン(ガウン)の着用は有効です。
着用が必要な時:
- 感染症の人に身体的ケアを行う場合で、本人の血液や体液(唾液・鼻汁・痰など)、傷口から分泌液、および排せつ物が自分の身体が触れたり、飛び散る可能性がある場合
- 感染症がない方についても、本人の血液や体液、および排泄物が自分の身体が触れたり、飛び散る可能性がある場合
エプロン(ガウン)は、長袖で膝下まで覆うものが適しています。
また、素材について、布製は病原体が染み通る場合があるのでナイロン製のディスポーザブルエプロンが適しています。
使用後はビニール袋に入れて袋の口を結び捨ててください。
エプロン(ガウン)の着脱方法は、こちらの画像を参考にしてください。
引用画像:長谷川綿行
手洗い
手のひら・甲には常在菌(大腸菌など)や、他の付着菌も生存しています。
手洗いは感染を予防するための最も基本的で重要な手技です。
清潔管理の基本は手洗いにつきます。
私たちの手は、1日の間に非常に多くのものを触れたり、様々な作業を行っており、手を媒介として、目では見ることのできない有害な微生物や菌を運搬してしまうことになります。
介護施設で働く職員として大切なことは、感染予防を意識した適切な手洗いを行うことであり、その結果として、感染予防につながる非常に大切な手段となります。
手洗いは、適切なタイミング、適切な方法で手洗いをする必要があります。
手を洗うタイミング
手を洗うタイミングは、次の通りです。
- 調理前・食材を触った後
- 食事介助の前後
- 自身の食事の前後
- 掃除の後・ゴミを処理した後
- トイレ介助・おむつ交換の前後
- 自身が鼻をかんだり、トイレに行った後
- 事務作業をした後
- パソコンやスマホを触った後
- 訪問先に到着したとき、帰るとき
- 身体的ケアの後
- 傷口に触れる場合の前後
- 吸引機器等に触れる場合の前後
- 血液や体液(唾液・鼻汁・痰など)、傷からの分泌液に触れた場合
- 尿・便に触れた場合
手の洗い方
手の荒い方は、こちらの画像を参考にしてください。
手洗いミスをしやすい部位を知り、ミスをしやすい部位を意識して洗うことが大事です。
洗い残しをしやすいところは図の赤い部分です。
引用画像:看護roo
これらの個所をしっかり洗うように心がけましょう。
手が汚れたらすぐに消毒ではなく、まずは手洗いからです。
速乾性刷り込み式手打ち手指消毒薬を用いる場合も、しっかり手洗いをした後でないと、消毒薬の効果は低くなります。
手洗い後も重要です。
手洗いをした後は手を十分に乾かしましょう。
手を乾燥させるためには、同じタオルで頻回に拭くのではなく、衛生的にもペーパータオルを使用することが望ましいです。
また乾燥した冬季などでは、水作業で手荒れを生じやすく、その結果小さな傷ができて、それが感染の原因となることがあるので、ハンドクリームなどで手荒れを防ぐことも大事な感染予防対策です。
感染者が出た場合の対応について
施設で感染者が出た場合は、次の①⇨⑥ような対応をします。
① 施設内の状況を確認して速やかに連絡・報告
施設内の状況を確認し、次の人数を把握します。(職員数、入所者数、うち感染者数)
施設内の職員間で情報共有し、家族や配置医等に報告します。
他の介護事業所やケアマナージャー等、関係機関と情報を共有します。
② 感染者含め入所者の体調を確認
体調不良者、症状悪化した人がいる場合は速やかに配置医や協力医療機関等に相談しましょう。
③ 自治体への発生報告
報告基準等については、各区や各市の保健所へ相談します。
※事前に、自施設がどの自治体へ報告すべきか調べて準備しておきましょう。
④ 治療に向けた調整
配置医や協力医療機関等へ受診や治療について相談します。
往診の協力が得られない場合は近隣で往診可能な医療機関を探します。(もし確保できない場合は、施設の所在地を管轄する保健所へ相談します)
⑤ ゾーニングの実施
レッドゾーンとグリーンゾーンを明確にします。(誰が見てもわかるように表示する)
例えば、感染者が少数で陽性者が居室内にとどまることが出来る場合は、陽性者の居室のみをレッドゾーンにします。
感染者が複数いて、居室内だけで療養できない場合は、廊下等の共有スペースもレッドゾーンにします。
そして、居室内だけで過ごす期間はできるだけ短くし、可能なら隔離中にリハビリテーションを実施します。
ゾーニングは、感染者の病状や特性(マスクの着用が難しい、徘徊の有無等)、施設の構造(ユニットタイプ、多床室等)を考慮して実施します。
ゾーニングについて詳しく知りたい場合は、こちらを参考にしてください。参考:厚労省HP
⑥ PPE(感染防護具)の適切な使用・着用
感染者へのケア時はN95マスクを着用しましょう。
感染の範囲が特定できていない場合や、職員から入所者への感染が推定される場合は、施設職員全体でN95マスクの着用を推奨されています。
事前に、正しいN95マスクの着脱方法を確認しておきましょう。
施設内で嘔吐があった場合
介護施設はしばしば利用者さんが嘔吐することがあります。
食中毒や感染症で嘔吐する場合もありますが、それだけではなく、高齢になると胃や食道のはたらきそのものが低下してしまいます。
また、前傾姿勢状態が続くことによる嘔吐も見られますし、便秘がひどくなることで嘔吐してしまうこともあります。
介護施設では、嘔吐処理の準備を常に整えていて、嘔吐処理の手順を熟知している必要があります。
嘔吐物処理の準備物
まずは準備物からお伝えします。
準備物:
- 使い捨て長そでエプロン
- 使い捨て手袋:予備も含めて3枚準備しておく
- 不織布マスク
- 塩素系消毒液:家庭用塩素系漂白剤10mlと水500mlを合わせたもの
- ペーパータオル:大量に準備しておく
- 新聞紙:処理する者が膝をつく際に使用する
- ポリ袋:予備も含めて2枚準備しておく
- バケツ:ポリ袋をかぶせておくと使用しやすい
塩素系消毒液をペットボトルに入れて保管する場合、希釈後7日が有効期限であることを忘れず、また直射日光の当たらないところに置いておくことにも注意しておきましょう。
嘔吐処理の手順
次に嘔吐処理の手順についてお伝えしていきます。
まずは近くにいる人を別の場所に移動させ、処理を行う職員以外は近づかないようにしましょう。
汚染区域(嘔吐物から半径2M以内)と清潔区域に分け、作業者とは別の補助者が汚染区域に人が入らないよう注意しておきましょう。
そして嘔吐処理は、1⇒8 の順に実施します。
嘔吐処理手順:
1、すぐに窓を開け、 十分な換気をしながら処理していきます。
2、作業者は、使い捨ての長そでエプロン、 手袋、 不織布マスクを着用、靴はポリ袋などで覆います。
3、消毒液を染み込ませたペーパータオルで嘔吐物を覆い、嘔吐物を包み込むようにペーパータオルを外側から中心部に寄せ集めてポリ袋に入れます。
それを2回繰り返します。
4、 塩素系消毒液で汚染区域を、塩素系消毒液を染み込ませたペーパータオルで覆い、約10分間置いたあと水拭きをします。
その後、汚染区域と清潔区域の境界線上を、消毒液を染み込ませたペーパータオルを敷き詰めて消毒します。
5、床を拭き終わったら、手袋を新しいものに変えます。
嘔吐物に触れた側が内側になるように外し、どこにも触れないように注意してポリ袋に入れます。
6、ポリ袋に消毒液を少量入れて密封します。
念のためポリ袋は2重にして、感染性廃棄物として適切に処分します。
7、嘔吐物が付着した衣類などは熱水消毒(85℃の湯に10分間つけ込む)を行い、その後は通常通り洗濯します。
8、すべての処理が終わったら、手洗いとうがいをして終了です。
こちらの画像も参考にしてください。
引用画像:ジャンブレ
各感染症の原因・対応方法等
感染症にはいろいろなものがありますが、介護施設でよく生じる代表的な感染症5つの原因や注意点をあげていきます。
- ノロウイルス
- かぜ・インフルエンザ
- 水虫(足白癬)
- MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
- 疥癬
① ノロウイルス
ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、ノロウイルスに汚染された貝類を、生あるいは不十分な加熱で食べた場合に感染します。
また食品の取扱者がウイルスに感染し、その人の手指などを介して汚染された食品を食べた場合や、感染者の吐物や便などを介してウイルスが口に入った場合などに感染します。
毎年、冬場にはノロウイルスが多発する傾向があります。
高齢者が集団で生活している施設等においては、一気に広がる可能性があるため要注意です。
注意点
ノロウイルスが施設で発症しないように以下のことに注意しケアに取り組みます。
- 高齢者など抵抗力の弱い方の食事について、過熱が必要な食品(特にカニなどの二枚貝)は中心部までしっかり過熱するようにしましょう。(85℃、1分以上)
- 石けんを使用し、十分な手洗いとうがいを励行しましょう。
- 手洗い後はタオルの共有は避け、使い捨てのペーパータオルなどを使用しましょう。
- 調理器具等は、使用後に消毒・殺菌を行いましょう。(消毒用アルコールは効果が弱く、熱湯か次亜塩素酸ナトリウムが効果的です。)
- 盛り付けや配膳などの作業時には、使い捨て手袋を着用しましょう。
- 下痢や嘔吐症状のある方は、食品を直接取り扱う作業をしないようにしましょう。
もし感染者が出た場合は、次のような対応を行います。
- 感染症が発生した場合は、利用者さんと職員の健康状態(症状の有無)を把握し、発生した居室、階ごとにまとめ、受診状況や診断名、検査と治療内容を記録しましょう。
- 職員や来訪者の健康状態によっては、利用者さんとの接触や面会を制限する措置を講じてください。
- 嘔吐や便を処理する場合は、使い捨ての手袋、マスク、エプロンを着用し、ウイルスが飛び散らないように処理しましょう。
- 汚物をペーパータオル等で静かにふき取り、汚物等はできる限り揺らさないよう速やかに閉じます。
- 汚物が付着した床などは、次亜塩素酸ナトリウムを浸すようにふき取ります。
- 汚物やふき取りに使用したペーパータオル、手袋等は、ビニール袋に密封して破棄します。
- リネン類の消毒は、85℃、1分以上の熱水洗濯、または次亜塩素酸ナトリウムに浸して消毒しましょう。
ノロウイルスは乾燥すると容易に空中を漂い、これが口に入って感染することがあるので、汚物を乾燥させないうちに処理することが重要です。
感染者が発生した場合は、喚起を十分に行いながら、ドアノブ、カーテン、リネン類、日用品などの環境についても次亜塩素酸ナトリウムで消毒するようにしましょう。
その他
感染すると1~2日後に発症し、主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱(軽度)などです。
通常は1~2日で収まりますが、高齢者や乳児では、脱水症状により重症化することがあります。
また、症状が治まっても、1週間ぐらいは便にウイルスが排出されますので、その間も2次感染の防止に注意が必要です。
現在、ノロウイルスに効果のある治療薬はありません。
通常は、脱水症状がひどい場合に点滴を行うなど水分の補給を行う対処をします。
② かぜ・インフルエンザ
かぜの原因は、90%がウイルスです。
かぜのなかで最も強い全身症状と呼吸器症状が現れ、毎年その流行が繰り返されるのがインフルエンザです。
感染経路は、感染者のくしゃみや咳などで空気中に放出されたウイルスを吸い込んだ人へ感染します。
また、手指もウイルスの感染経路となることもあります。
注意点
ケアの前後にうがい、手洗いを十分に行うことが最も大切です。
そして定期的に部屋の換気を行いましょう。
室温は20~30℃位、湿度は60~70%を快適に保ちます。
ケアを行う場合は必ずマスクを着用してください。
利用者さんに発熱がなくても、のど痛、くしゃみ、鼻水、咳、痰、悪寒、ふるえ、頭痛、関節痛、筋肉痛、下痢、吐き気などの症状があれば、医師・訪問看護師に相談してください。
そして、利用者さんにもし発熱があれば、入浴や全身清拭をやめ、発汗のある部位のみ乾布清拭をして身体の清潔を保ちましょう。
その他
規則正しい生活を送り、食事・睡眠を十分とって抵抗力をつけることも大事です。
可能なら、ケアに携わる職員はインフルエンザワクチンの接種(流行する前の10月~11月が最適)を行いましょう。
インフルエンザワクチンの接種については、必ずかかりつけ医に相談してください。
※ホームヘルパーとして訪問している場合は、自分がかぜやインフルエンザに罹った場合は、程度によりますが、利用者や家族に感染させないために、上司に相談して治るまで訪問を休ませてもらうか交代してもらうことが必要です。
③ 水虫(足白癬)
白癬菌(はくせんきん)というカビ(真菌)の一種が皮膚に住みついて増殖する皮膚の病気です。
一般的に多い、足の水虫を足白癬といいます。
感染経路は、足からむけ落ちた皮膚と一緒に、バスマット、靴下、スリッパの共有などで足に付着し発症します。
白癬菌は高温多湿を好み、不潔にしていると感染しやすくなります。
注意点
シーツ、寝間着などを交換するときはほこりを立てないようにして白癬菌を周囲にばらまかないように注意してください。
足を洗う際は、石鹸が残らないようによく洗い流し、良くふいて乾燥させることが大切です。
ケアスタッフはディスポーザブル手袋を着用する方が望ましいです。
そして、爪切りは本人専用としましょう。使用後はアルコール面で拭いてください。
タオル、バスタオル、靴下なども本人専用にしましょう。
バスマットは濡れたら取り替えます。
1日1回は床やカーペット、および畳の掃除をしましょう。
高温多湿にならないように喚起に気を付け室温にも注意しましょう。
その他
家にある塗り薬をむやみに使用しないようにしましょう。
使用方法を間違えると逆効果になり悪化します。
必ず専門医師の診察を受け、処方された薬のみを使用しましょう。
水虫はよくなったようでも再発しやすいので、塗り薬は広範囲に根気良く塗りましょう。
終了時は、医師に塗り薬の終了の確認をとってください。
患部に薬を塗った後は手洗いを十分に行うことが必須です。
患部に触れたときは石鹸、流水を用いて手洗いを十分に行いましょう。
症状について:部位によって病名が変わります。
足白癬
俗にいう水虫です。
足の趾の間が赤くなって皮がむけたり、ただれてジュクジュクしたり、水ぶくれができて強いかゆみを生じたり、足の裏全体がカサカサして厚く硬くなり皮がボロボロにむけて踵にひび割れたりします。
かゆみがないとただの皮膚の荒れとして放置され爪白癬を合併している頻度が高いので注意が必要です。
手白癬
手の指の間に足と同じような症状があります。
爪白癬
手、足白癬に合併することが多く爪が白色から黄色に濁り厚くなり変形します。
爪白癬は白癬菌の貯蔵庫になります。
股部白癬(いんきんたむし)
股間、太ももの内側、陰部にみられかゆみがあり赤みがだんだん輪になって周りに広がります。
体部白癬(たむし、ぜにむし)
股部白癬と同様、赤みがだんだん輪になって周りに広がります。
頭部白癬(しらくも)
頭皮がカサカサして毛が抜け放置すると瘢痕、永久脱毛を残します。
④ MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
MRSAとは「Methicillin Resistant Staphylococcus Aureus」の頭文字をとった略称で、日本語では「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」と言います。
MRSAは、通常細菌を退治するために使われる抗生剤(抗生物質)が効きにくくなった黄色ブドウ球菌です。
黄色ブドウ球菌は私たちの体内で共存している常在菌です。
このMRSAについても、健康な人でも皮膚・髪の毛・鼻の中・口の中に持っている場合もあり、身体についているからといって、それだけでは病気にはなりません。
MRSAが体の弱った人の体内に入ると、さまざまな疾患を引き起こしたり、病気が重くなったりすることがあります。
MRSAは湿潤していて空気の流通の悪いところ、例えば鼻の穴や喉(空気の流通路)・陰部・床ずれなどによく付着していますので、その付着している箇所、つまり鼻汁・痰・尿・床ずれの傷口などに直接触れることで感染します。
元気であれば菌が体内に入っても、通常1日~3日で死んでしまうと言われています。
注意点
MRSAは病原性の弱い菌であることを理解して正しく接しましょう。
例えMRSAが体内に入っても、健康であればほとんど問題にならないこと認識しておきます。
「MRSA陽性」と聞いたら、どこの部位から検出されているのかを確認しましょう。
その部位に直接触れるときのみディスポーサブル手袋の着用が必要です。(例:痰からであれば口腔ケアをするとき、尿であればオムツ交換をするときなど)
MRSA保菌者の隔離、専用エプロン、マスクの着用、床の粘着マットなどの使用は不必要です
入浴やシャワー浴介助・清拭・衣類交換など、身体の清潔に関するケアにおいては通常通りで、特別な対応は不要です。
鼻腔や口腔ケアにおいては、鼻や痰からMRSA菌が検出されている場合のみディスポーサブル手袋を着用しますが、菌の検出がなければ通常通りです。
排泄ケアについては、陰部や尿からMRSA菌が検出されている場合はディスポーザブル手袋を着用し、陰部洗浄や陰部清拭、オムツ交換をします。
食器は別々にする必要はなく、洗浄も通常通りで、家庭用洗剤で問題はありません。
清掃、居間の換気などは通常通りで、特別にする必要はありません。
マットレス、布団などは最低1週間に1回は日光に干しましょう。
治療について:
MRSAの保菌(菌を保有している状態で症状がない場合)だけでは、原則として全身的な除菌治療は行いません。
MRSAによる症状が現れていて重度の場合は他の抗生物質の投与を行います。
⑤ 疥癬(かいせん)
疥癬は疥癬虫(ヒゼンダニ)が人の表皮内(皮膚の表面)に寄生することで起こる、「痒みの強い」皮膚感染症です。
感染の経路は主として皮膚から皮膚で、重症の疥癬(いわゆるノルウェー疥癬)ではヒゼンダニが付着した寝具・衣類を介して感染することも稀にあります。
注意点
早期診断・早期治療でピンポン感染を避けることが重要です。
治療が成功しても「夜間の激しい痒み」や一部の症状は2~4週間は続きます。
なぜなら治療でヒゼンダニが死んでも、虫体・糞・卵などが2~4週間皮膚に残っているからです。
症状は、虫体・糞・卵に対するアレルギー反応が起こるためと考えられています。
シーツ・肌着・寝具・タオルなどは交換後、洗濯し乾燥させます。
なお心配なら、乾燥機・アイロンを使用するとよいでしょう(ヒゼンダニは乾燥や熱に弱く50℃ー10分で死ぬ)。
シーツ交換は、四隅を内側にまとめヒゼンダニが散乱しないように気を付けましょう。
ヒゼンダニが床に落ちても、一般の家庭環境では2~3日で死ぬので、心配する必要はありません。
掃除は普通通りで構いません。
ふつうの疥癬では、握手などではうつらないので、重症疥癬以外、長袖の衣類、ガウンや(ゴム/ナイロン)手袋を使用する必要はありません。
重症の疥癬患者の介護をする際は、(ゴム/ナイロン)手袋、長袖の衣類(エプロン)を使用します。
使用した衣類(エプロンを含む)は、洗濯し乾燥するだけでよいのですが、心配なら洗濯前に熱湯(50℃以上)に10分つけるとよいでしょう。
介護者は爪を短く切っておきましょう。
感染は皮膚から皮膚への接触感染なので、手袋・長袖の衣類着用で介助をすれば、手指の特別な洗浄の必要はありません。
その他
感染して約1~5か月経過してから、主な症状が出現します。
主な症状は「夜間の激しい痒み」が好発部位(両手、腋、胸、ベルトライン、臀部、股)に皮膚が少し盛り上がったトンネル様の皮疹、全身に赤いブツブツ(丘疹、結節)、ひっかいた為の傷痕が出現します。
治療には外用、内服などありますが医師の指示通りに行いましょう。
重症疥癬以外の疥癬は強い感染性を持たず。免疫力の高いご家族や介護者は、適切な治療をすればすぐに治ります。
したがって予防を目的とした洗浄、オイラックスの使用は避ける方が賢明です。
「疥癬」は恐ろしい感染症ではなく、次々に感染するのは不適切な対応(多くは外用副腎皮質ホルモン剤の誤使用)が原因です。
「自分が感染症かもしない」と思ったら
腹痛や下痢、嘔吐などの症状がある場合や、いつもと体の調子が違うと感じたときは、まずは上司に連絡して指示を仰ぎ、受診するようにしましょう。
「自分が出勤しないと迷惑がかかる」と思い、体調が悪いのに出勤すると、利用者さんにまで感染症が広がってしまう可能性があります。
受診結果は、すぐに施設にお知らせください。
そして、医師の指示に従いながら、次のことも念頭に置いておきましょう。
- 水分補給を適切に行う(下痢やおう吐などにより脱水症状になることがあります)
- 市販薬を飲まない
- タオルの共有を避ける
- 消毒、換気を徹底する
感染症に罹患した場合は、必ず隔離機関が終わった後、出勤するようにしてください。
人権の尊重
感染症に罹患した利用者さんやご家族の心を傷つけないように配慮することも、介護職として必要な配慮です。
感染症のために「差別感」や「不安感」を抱かせないよう、不必要な防御や過剰な対策は意味は避けましょう。
必要最小限の適切な方法で接し、必要に応じた説明と気配りを忘れてはいけません。
また、感染症に関わる情報は、利用者さんの私生活や個人情報に関係するものもあります。
プライバシー保護の観点から、業務に関与しないものには不用意に情報を漏らさないという責任があります。
職員同士の感染防止
職員同士の感染防止にも注意する必要があります。
例えば、職員のみが出入りする休憩室での過ごし方です。
ストロー付きのパックやペットボトルなど、飲みかけの飲料を室内や冷蔵庫内に放置していると、口を付けた部分から細菌が繁殖し、周辺の物品や食品などに移ることもあります。
開封後は1日で飲み切る、取り違えないよう記名するなどのルールも重要です。
そして、共用の場所は清潔にしておきます。
ロッカーや机、パソコン・タブレット機器など、職員同士で共用する場所や物品も清掃・消毒して清潔な状態を保つことが大切です。
おわりに
いかがだったでしょうか。
本ブログの内容は、感染症や感染症予防について大まかに理解できる内容となっていたはずです。
尚、新型コロナウイルスに対する対策や予防については言及していないので、そちらについては別のブログでしっかりと解説していきます。
ちなみに感染症予防研修は年に1回以上の開催と、新規職員の採用時にも実施する必要があるのでお忘れ無く!
それではこれで終わります。
御社の運営に少しでもいかしていただければ幸いです。
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