介護における『自立支援』とは?!【研修資料としても使える、基本的な理解と具体的な方法を解説】
筆者
記事を書いている僕は、作業療法士として6年病院で勤め、その後デイサービスで管理者を4年、そして今はグループホーム・デイサービス・ヘルパーステーションの統括部長を兼務しています。
日々忙しく働かれている皆さんに少しでもお役立てできるよう、介護職にとって必要な情報をシェアしていきたいと思います。
読者さんへの前置きメッセージ
こんにちは、とも(@tomoaki_0324)です。『自立支援』と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか?「できることは自分でできることはやってもらうって感じでしょ」というのでは30点。
今回は、『自立支援』について掘り下げて考え、どのように実践していくかをかなり具体的に記載していきます。
この記事を読む価値
- 正しい自立支援の知識についてわかりやすく知ることができます。
- 即、現場でも使えるような具体例もあげています。
- 自立支援の理想的なゴールがわかります。
それではさっそく見ていきましょう。
『自立支援』の前に『自立』を理解する
でもその考えだと、重度な障害者や後期高齢者など現状維持がやっとという方は自立できないことになりませんか?
このような方へ促す『自立』とは、『できるようになる』ではなく『介護が必要な状態になっても、自分の意思・決定で自分らしく生きる』ことです。
よく『自立』の反対は?と聞かれると『介護』?!という方が多いけど、ここでの『自立』の反対は『依存』になります。
障害者の側の自立観の例として、「私は2時間かけて自分で洋服を着ることよりも、介助を受けて5分で着替え、残りの時間で社会参加をしたい」と言っておられる方もいます。
実は、この考えが非常に大事です。
『自立』を具体的に正しく言うと、以下のように分類できます。
- 自己選択:自分で選ぶこと
- 自己決定:自分で決めること
- 自己遂行:自分で行うこと
となります。
そして、『自立支援』とは、以下のようになります。
- 自己選択を支援する
- 自己決定を支援する
- 自己遂行を支援する
『自立支援』について
ではそれぞれを、さらに具体的に述べていきます。
自己選択への支援:
生活やケアの場面で、自然な形で『ご本人が選択できる』場面が提示できるように、選択肢を準備することが必要です。
例えば、和食か洋食か選べるようにする、飲みたい時に飲みたいものが選べるように複数種類の飲み物を置いておく、等も良いかもしれません。
自己決定への支援:
ご本人自らが『決める』機会を作ります。
そして選択し決定するためには以下①→④の手順が必要です。
- 何があるのか認識し覚えること
- それらの違いを理解・認識・覚えること
- 自分の好みと各品の特徴を比較すること
- 自分の好みに一番近いものを選出すること
よって記憶力・認知力を評価する必要があります。
利用者さんによっては、選択数を少なくすることなども支援方法の一つになります。
自己遂行への支援
ご本人の障害に合わせた環境設定、また過介助にならない介助方法が必要です。
以下のような工夫ができます。
- 行動の手順を書いておく
- 「宜しければ、お手伝いしましょうか」という声かけ
- 時計をアナログにかえる
- スケジュールを書いて渡しておく
- わかりやすいトイレの標識をつける
いかがでしょうか。
なんとなくイメージをつかんでいただけたでしょうか。
『自立支援』を取り入れる
『自己選択を支援する』『自己決定を支援する』『自己遂行を支援する』をできるような環境を作るには以下のような工夫が必要です。
- 過剰なお世話をしないケア
- 対象者が自分から行動できる環境
- 対象者同士の助け合いや相互作用を最大限に生かす雰囲気
- 誰かの役にたつ機会や活躍の機会を作る
その結果下記のような反応が期待できます。
- 自信が回復する
- 自己効力感が上がる
- 生きる活力が生まれる
- 人や地域社会とのつながりを取り戻す
そうなると最終的には、その方の「生活の質の向上」を促すことにつながります。
自立支援の目的は、対象者の生活機能の向上、実際の生活の幅が広がることです。
「筋力がついた」、「体力測定値が良くなった」、「片足立ちが○○秒になった」、で終わるのではなく、それによって、「夕飯の支度の間、立位が取れるようになった」、というような実生活の広がりにつなげていくことが大切です。
実はそれが利用者さんのやれることを奪い、自立を妨げている可能性があります。
でも利用者さんももしかしたら、そのようなサービスを求めているかもしれません。
そういう場合はまず『利用者さんと相談する』という姿勢が必要です。
スタッフの思いを先行させ、誘導しすぎないようにし、本人からの答えや反応を『待つ』姿勢でスタッフは働きかけます。
基本的には、ご本人が自宅でも行っている動作は本人にやってもらう、できないところをどのようにすればいいかを本人と一緒にやる、考えるという視点でかかわりを持つようにします。
すぐにやってあげるのではなく、ご本人にも考えてもらう、解決までのプロセスを共有するということが重要です。
各職種とご本人が目標を共有し、「やってもらう」という依存から「やってみたい」という主体性への働きかけが必要です。
プログラム内容
施設内でできる自立支援のプログラムとしては、以下のようなものがあげられます。
- アルコール消毒を自分で行う
- バイタルはセルフで行う
- 服をハンガーにかける
- ドリンクは自分でとりにいく
- テレビは自分でつける
- 物理療法などの設定も自分で行う
次に『役割プログラム』です。
役割を持っていただくことで自己肯定感を刺激し、『自立』への働きかけにすることができます。
- ペットのお世話係
- テーブル拭き係
- お味噌汁作成係
『家庭での役割』『地域での役割』を持っていただくこと、まずは施設内で『役割』を持っていただくことが重要です。
セルフマネジメント(自己管理)の自立
セルフマネジメントの自立もその一端を担っています。
セルフマネジメントの例としては、以下の内容があげられます。
- バイタル値をみて、その日の活動量を自分で調節する
- 介護予防活動を自分自身で管理して行う
- 地域との付き合いを自分の判断で行う
- 自分のケア方針や活動方針が専門家の意見を聞いたうえで自分で決めて行う
- ADLの実施を、自分の能力を判断して自分で行えるものは自分で行う
- 金銭管理を自分の力で行う
- 自宅で行う体操を自分自身で時間を決めて行う
- 胃ろうの有無など自分の死に方を自分で決められる
おわりに
いかがだったでしょうか。
施設で『自立支援』という一つの方向に向かうことによって、スタッフにはやりがいができ、利用者さんは生き甲斐ができると確信しています。
そして、それには『成果を共有する』ことが必要かと思います。
- 利用者さんの主体性が発揮されたことを共有する
- 利用者さんがほかの誰かのために、さりげなく心配りをしていたことを共有する
介護保険制度の基本理念にも「自立」を支援するようにと出てきます。下記に載せていますので参考にしてみてください(読むのがしんどい方は太文字だけでも!)
<介護保険制度の基本理念>
「この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする」
※参考:厚生労働省HP
また、WHO(世界保健機構)も『介護=自立支援』だと述べています。
この記事を読んでいただき、『自立支援』の考えを深めて、現場に活かせていただけると幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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